槇氏:企業が収益をあげるには、最高財務責任者(CFO)目線で見たら、売り上げを伸ばすかコストを下げるという話になります。IT部門は過去10~20年の間、コストを下げることに注力してきました。一方でマーケティング部門は、どうやって売り上げを最大化しようか、もしくはどうやって売り上げアップに間接的に寄与するかを考えてきたので、IT部門とは視点や話が合わないことが多々あります。
私もIT、マーケティング、営業企画の方々を混ぜてワークショップを実施したことがありますが、出てくる意見も視点も違うので、新しく部署や組織を作るところからスタートしても変化が起きづらいですね。それよりは、意識の高い人に啓発を含めていろいろな部署を動き回ってもらうと、流れが変わって賛同者も増えてきて、その活動の延長で組織を作ると有効に機能することが多いです。よって、先に組織を作ることからスタートするのはあまり勧められないですね。
B2Bhack.com B2Bハッカー(ビジネスファシリテーター)飯室淳史 氏
飯室氏:その通りだと思います。組織を最初にデザインすると大体失敗します。正直なことをいうと「こういう組織がいい」というのは、「マーケティングオートメーションがいい」というのとあまり変わらない。
協働するようになってから「こういう組織はいいよね」とフレームワークにできるいうことはありますが、先に絵を描くのではなくて、達成するために必要な人の能力やスキルが必要です。
槇氏:従来の経営哲学としては、「組織はマネジメントするもの」というのが定石でした。しかし今は、Netflixの例が有名ですが、社員が自分たちでやることを考えて行動するという、ルールに縛られずに自律的に活動する企業文化が重視され始めています。
自律した文化が醸成されているところに、大きなビジョンや目的を提示することで、社員はそれらに対して自分が何をしたらいいかということを考えて動くことができる。これからの組織の在り方にはこうした仕組みが必要ですね。ただ、いきなり全部変えるのは無理なので、一部、そういうミッションを持った部門からやることが正解なのだと思います。おそらく、マーケティング部門が候補のひとつですね。
中東氏:組織は戦略に従うので、どう戦略を持つのかという話によりけりなのかなと。だから効果を最大化する組織は、効果を最大化する組織が先にあると。
飯室氏:その通りで、今は「顧客志向」「顧客体験」という発想に行くので。以前は製品ごとの事業部があったので、顧客ごとに分けましょうというのは通じやすいと思います。現実的に提案するとしたら、会社の規模などによって違いますから一概なことは言えません。組織を変えることを考えるくらいなら、組織文化を変えることにお金を使った方がいいのではないでしょうか。