”成果”を売れないと厳しい
飯室氏:自分だけではできないこと領域は他社の助けを借りるという考え方はその通りです。私のいた巨大企業GEでさえも、相手の大きさに関係なく、ないものは提供してもらうという姿勢が明確です。それを動かしている原動力は何か、ベンチャーと付き合わなくてもいいじゃないかといっても、技術を手に入れる手段はないーーだから危機感があるのです。とんでもない危機感を持っている会社だけが生き残っているので、経営者は足が震えるくらい、夜も眠れないくらい怖いと言います。
B2Bhack.com B2Bハッカー(ビジネスファシリテーター)飯室淳史 氏
そこで私がずっと聞いてきたのは、”成果を売る”という「アウトカムセリング」の方向に行かない限り、もう生き残れないということです。Uberにしろ、Airbnbにしろ、結局成果だけを提供するというビジネスモデルで、世界最大の宿泊会社と、タクシー会社を作ってしまいました。それがGEの経営者からすると恐ろしい。あれほど簡単に世の中を変えてしまうような会社が出てくるとしたら、GEの30万人の会社なんて吹っ飛ぶと思っているのです。
だからもう、何が何でも製品なんか売るな、成果を売れと言っています。でも、その波はまだ日本には来ていません。UberとAirbnbの話をするのですが、新しいとかすごいとか、デジタルやITの切り口だけでしか言っていなくて、成果モデルが世界を制するというところには触れられていない。どうしても日本ではモノづくりの方に話がいってしまって。そんな状況では市場を取られてしまいますよね。
槇氏:最近よく顧客から相談を受けるのは、モノ売りからコト売りに転換したいということです。世の中の製品やサービスが顧客体験中心にシフトしている中で、体験に対してどう対価を払ってもらうかという話になってきます。そうなると、製品やサービスそのものだけをいくらアピールしてもダメなのです。顧客が何を望んでいるか、上質な顧客体験を実現するためにどのテクノロジを組み合わせて製品やサービスを作るか、というように考え方を逆転させないといけない。機能を軸に見てしまうと、Uberが実現していることが「手配や支払いが少し便利なタクシー」という認識で終わってしまう。
UberやAirbnbのサービスで重要なのは、やはり体験そのものですね。上質な体験を通じて認識した価値は、ソーシャルやネットを通じてあっという間に世の中に広がります。それが、伝統的な大企業からするとすごく怖い。何十年もかけて作り上げてきたビジネスが、瞬く間にひっくり返されるわけですから。
飯室氏:それはもう恐ろしい。たとえば、飛行機のジェットエンジンの吸気口に、ファンブレードという複雑な形状の板があります。これまではオートクレープという、積層された複合材料だったのですが、それを3Dプリンタで制作する例が出始めています。その技術を誰が作ったかといえば、マレーシアの学生です。クラウドソーシングで、誰が一番軽量で熱に強くて、小さくできるかというコンテストをネットでしたら、マレーシアの学生が優勝しました。そういう時代になってきているとしたら、自社の設計エンジニアがいらないというオチになります。