座談会@ZDNet

「成果しか売れない時代」の前にできること--B2Bマーケティング座談会(6) - (page 2)

山田竜司 (編集部) 吉澤亨史

2017-06-02 07:00

”成果”を売れないと厳しい

 飯室氏:自分だけではできないこと領域は他社の助けを借りるという考え方はその通りです。私のいた巨大企業GEでさえも、相手の大きさに関係なく、ないものは提供してもらうという姿勢が明確です。それを動かしている原動力は何か、ベンチャーと付き合わなくてもいいじゃないかといっても、技術を手に入れる手段はないーーだから危機感があるのです。とんでもない危機感を持っている会社だけが生き残っているので、経営者は足が震えるくらい、夜も眠れないくらい怖いと言います。


B2Bhack.com B2Bハッカー(ビジネスファシリテーター)飯室淳史 氏

 そこで私がずっと聞いてきたのは、”成果を売る”という「アウトカムセリング」の方向に行かない限り、もう生き残れないということです。Uberにしろ、Airbnbにしろ、結局成果だけを提供するというビジネスモデルで、世界最大の宿泊会社と、タクシー会社を作ってしまいました。それがGEの経営者からすると恐ろしい。あれほど簡単に世の中を変えてしまうような会社が出てくるとしたら、GEの30万人の会社なんて吹っ飛ぶと思っているのです。

 だからもう、何が何でも製品なんか売るな、成果を売れと言っています。でも、その波はまだ日本には来ていません。UberとAirbnbの話をするのですが、新しいとかすごいとか、デジタルやITの切り口だけでしか言っていなくて、成果モデルが世界を制するというところには触れられていない。どうしても日本ではモノづくりの方に話がいってしまって。そんな状況では市場を取られてしまいますよね。

 槇氏:最近よく顧客から相談を受けるのは、モノ売りからコト売りに転換したいということです。世の中の製品やサービスが顧客体験中心にシフトしている中で、体験に対してどう対価を払ってもらうかという話になってきます。そうなると、製品やサービスそのものだけをいくらアピールしてもダメなのです。顧客が何を望んでいるか、上質な顧客体験を実現するためにどのテクノロジを組み合わせて製品やサービスを作るか、というように考え方を逆転させないといけない。機能を軸に見てしまうと、Uberが実現していることが「手配や支払いが少し便利なタクシー」という認識で終わってしまう。

 UberやAirbnbのサービスで重要なのは、やはり体験そのものですね。上質な体験を通じて認識した価値は、ソーシャルやネットを通じてあっという間に世の中に広がります。それが、伝統的な大企業からするとすごく怖い。何十年もかけて作り上げてきたビジネスが、瞬く間にひっくり返されるわけですから。

 飯室氏:それはもう恐ろしい。たとえば、飛行機のジェットエンジンの吸気口に、ファンブレードという複雑な形状の板があります。これまではオートクレープという、積層された複合材料だったのですが、それを3Dプリンタで制作する例が出始めています。その技術を誰が作ったかといえば、マレーシアの学生です。クラウドソーシングで、誰が一番軽量で熱に強くて、小さくできるかというコンテストをネットでしたら、マレーシアの学生が優勝しました。そういう時代になってきているとしたら、自社の設計エンジニアがいらないというオチになります。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]