槇氏:R&Dの外注ができるわけですね。
飯室氏:そうなると2020年にはどうなるかといえば、「製品を売ります」という4Pや4Cといった古典的な話を教科書通りに教えているような会社は、(ゲームチェンジャーには)勝てないでしょう。(モノより体験を売るというところでは)UXの本がやたらと出ています。
一所懸命読んだのですが、ホテル業界が30~40年前から言っているような話の方がまともだと感じました。つまり、本当にサービスしか売ってこなかった会社の経験値のノウハウの方が圧倒的にすごい。売るものが変わるのだったら、営業部もマーケティングも、工場もR&Dも売るものを変えていかないといけない。
会社のバリエーションを全部変えない限り「モノからコトへ」なんてキレイゴトです。小手先だけ「体験させてあげるからこれを買って」という話にしかなっていない。それが現状です。でも、本来なら会社全体が変わらない限り「モノからコトへ」なんて言えません。
槇氏:製品やサービスをまずマーケットに出してみて、利用者の反応を見てブラッシュアップし、ある程度見込みが立てられたら量産や本格展開を進めるという、リーンスタートアップ型のアプローチは大企業ではなかなかできません。では、足りないピースを埋め合うという考え方で、スタートアップ企業と組んで、スタートアップのアイデアや製品・サービス開発のノウハウに投資して事業を運営・拡大した方が速く実現できます。
KDDI株式会社 ソリューション事業本部 ソリューション事業企画本部 ソリューションマーケティング部 部長 中東孝夫氏
飯室氏:だから自社でまかなっていたら5年かかることが1カ月でできるという話ですね。買えばいいじゃないか、買えないのだったらアライアンスを組めということですね。決定がすごく速いです。
中東氏:AirbnbもUberもAWSもケータイもソフトウェアもサーバも、「所有から利用」に全部移っているのですね。まさにシェアリングエコノミーです。シェアエコノミーをデザインしてエンゲージした人たちが儲かっている世界で、マーケティングは何をするのか。
マーケティング部門が2020年に残っているかといえば、あまり生き残っていそうな印象がなくて。将来、最高売上責任者(Chief Revenue Officer:CRO)のような役職が出てきて、その人がセールスとUX、マーケティングも見るようになるかもしれない。両方判る人間を作らないと両者の溝が埋まらない、ということです。
「所有から利用へ」といったときに、エクスペリエンス、体験というものがものすごく重要になってきます。それをデザインする部隊が果たして今のマーケティングを維持するか、デマンドジェネレーション(見込み案件の活動)の機能がB2Bのマーケティングにあり得るかといえば、私はないと思っています。
それではセールスにあるかといえば、それだけでも不足している、開発R&Dにも、ITにもない。例えば、CXO(チーフエクスペリエンスオフィサー)といった、”体験”をデザインするという役割に統合されるのではないかという気はします。