ガートナー ジャパンは4月4日、日本企業のクラウドコンピューティングへの取り組みに関する調査結果を発表した。
2017年の日本におけるクラウドコンピューティングの平均採用率は、2016年から0.8ポイント増加し、16.9%となった。さらに、今後1~2年における外部クラウドとオンプレミスへの投資意欲についてたずねたところ、日本企業の外部クラウドに対する投資意欲はオンプレミスの倍以上となった。ガートナーでは、投資意欲が高まっている割にクラウドの採用が伸びていないと判断している。
この調査は、2017年1月に国内の企業に向けて実施したもの。主にITインフラに導入する製品/サービスの選定や企画に関して決済/関与するユーザー企業のITリーダー515人を対象にしている。対象企業の業種は全般にわたり、従業員数規模は500人以上の企業が含まれている。
日本におけるクラウドコンピューティングの採用状況
形態別では、SaaSは以前から利用率が高く、ここ1年で採用率が大幅に増加した。PaaS、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウドについても着実な増加が見られる。しかし、DaaSは低迷しており、IaaSは既存の業務システムの置き換えの話がほとんどで、メリットが見えにくい状況がある。また、IaaSやクラウド上にプライベートクラウドを構築するホステッドプライベートは足踏み状態となっていることも分かった。
ガートナー ジャパンのバイス プレジデント 兼 最上級アナリストの亦賀 忠明氏は、ユーザーはクラウドの採用について、引き続き慎重な判断を行っており、運用上およびセキュリティ上の厳しい要件が設定されているシステムについては、外部クラウドの利用をためらう傾向が今でも続いていると指摘する。また、IaaSに関しては、依然として多くの誤解が見られ、それが利用を阻害する最大の要因となっているとした。
亦賀氏は、日本においても「クラウドを利用しないという選択肢は、今後確実に消え去る」と考えておく必要があるが、一方で、松竹梅の松に相当するミッションクリティカルな領域からオンプレミスがなくなることはなく、「すべてがクラウドになる」といった極端な解釈をしないよう注意すべきだとした。
今後の企業IT戦略には、「業務システムの維持とコスト削減の要件に応え、しっかり作って確実な運用を目指す」モード1と、「ビジネスの成長と革新の要件に応え、変化対応型のアプローチを取る」モード2に分けるバイモーダルのフレームワークで捉えることが重要だという。
さらに、ユーザー企業自身でクラウドを使いこなすスキルが極めて重要になると、亦賀氏は指摘している。
Amazon Web Services、Microsoft Azure、Google Cloud Platform、IBM Bluemixといったクラウドサービスは、もはやホスティングの対象ではなく、デジタルビジネスの具現化に不可欠な数百から数千ものサービス部品の集合体になっている。
APIはもとより、こうしたサービス部品を理解して駆使するスキルは、一般の企業が認識しているよりも相当に高度なものとなっており、それに対応するために、企業は2017年内に新たなスキルを獲得するための予算を計上し、具体的な人材投資を開始すべきだという。