同様の取り組みを始めている企業は他にも金融、製造、メディアなど多くある。「ロボットシェアード」構想や、「派遣ロボット」構想など、企業によって呼び方はさまざまだが、本質的な内容は同じである。
間接業務は特に検討対象となることが多い。バリエーションの解消が比較的容易で、標準化、集約化が進めやすく、既に導入されたERPの範囲とも結びついているのであろう。経理財務や人事領域で最も多く聞く課題は、繁閑差の解消である。
月末に向けてトランザクション量は増え、そのため組織の配員が難しく、多くの場合はオーバースタッフィングになっている。閑散期に対応できる部分は時期をずらして対応するような工夫がされているケースは多いが、それでも月末のピークとの稼働の差を解消できるレベルではない。
減っていく労働人口を企業が体感し始めた今、この問題はただの非効率では済まされず、ビジネス拡大の妨げにも発展しかねないのである。
実は多いエラー対応
業務領域ではなく、業務の種類に目を転じてみよう。品質にセンシティブな日本企業において、エラーの発生はチェックの回数と、これにかける工数で担保しているため、チェックに莫大な工数がかかっているという話が頻繁(ひんぱん)に寄せられる。
業務プロセス全体を見た時に、外部との接点を持つ発注や請求などの段階においてはエラーが多いという課題にはそれほどぶつからない。しかし、そこに至るまでの過程に多くのチェックプロセスを埋め、時期によっては残業による対応をしているケースは少なくない。
エラーは発生源から遠く離れれば離れるほど原因の究明と解消が難しく、当然割かれる工数も大きくなる。上流のプロセスが整流化されていないため、後続で大きな工数を費やしてエラー対応しているが、部門が異なるため上流プロセスの課題は見えていないといった例は多く見受けられる。
エラー対応にロボットを導入し、自動化を進めることで工数を軽減しようとした場合、人はロボットが対応できない例外ベースの対応に働き方をシフトすることになる。
これにより例外だけ人は対応すればよくなり、工数の削減を図れるように見える。しかし、そもそもエラーの原因である上流にある課題に対応しなければ、設計段階で例外処理が多すぎて結局なにも変わらないという結果になりかねない。
RPAの導入においてエンド・ツー・エンドの業務プロセスを同時に、または大規模に見直し・変更するまでの必要はないが、最終的に上流から下流まで含めて整流化している状態を作ることによって効果は最大化される。
エラーチェックは人にしかできない作業だと思われがちだが、ここに大きな工数が割かれているのであれば、上流プロセスの改善と、チェックのルール化によって自動化による効果を押し上げられる可能性は非常に高いと思ってよいだろう。