本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、日本IBMの吉崎敏文 執行役員と、パロアルトネットワークスのアリイヒロシ代表取締役会長兼社長の発言を紹介する。
「これからはデータをどう活用するかが、企業にとって競争優位の決め手になる」 (日本IBM 吉崎敏文 執行役員)
日本IBMの吉崎敏文 執行役員
日本IBMが先ごろ、企業向けの気象情報提供サービスを開始すると発表した。気象データとIBMのコグニティブ技術「Watson」を融合した新しい価値を提供するという。同社執行役員でワトソン事業担当の吉崎氏の冒頭の発言は、その発表会見で、企業におけるデータ活用の意義について語ったものである。
新サービスは、同社の気象予報士が24時間365日、リアルタイムにアジア太平洋地域の気象予報を行うセンターを同社の本社内に開設し、気象予報や気象データを企業向けに提供するとともに、それらを活用した製品やサービスを提供するものだ。
新サービスの背景として、IBMは高精度な気象予報や気象関連サービスを提供してきた米The Weather Company(TWC)を2016年1月に買収。同6月には、TWCのグローバルな気象予測とIBMのハイパーローカルな気象予測を組み合わせた新しい気象予測モデル「Deep Thunder」を発表した。これまでのTWCの実績とIBMの研究成果に基づく高精度の気象予報を提供していく構えだ。
新サービスの詳しい内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは吉崎氏が説明したWatsonの戦略に注目したい。
同氏によると、Watsonはコグニティブプラットフォームとして図のような展開が図られている。具体的には、さまざまなデータがWatsonに集積され、それをベースに産業別およびソリューション別にアプリケーションを展開し、各分野で価値のある情報サービスを提供していこうというものだ。今回の新サービスも、この仕組みに基づいて企業向けに幅広く情報を提供される形となる。
コグニティブプラットフォーム「Watson」の概要
こうして見ると、IBMはWatsonというコグニティブプラットフォームから各分野に向けて、企業にとって価値のある情報サービスをビジネスとして展開していこうと考えているようだ。
吉崎氏は会見の冒頭で、「データは21世紀の新たな天然資源である」との米IBM Ginni Rometty 最高経営責任者(CEO)のメッセージを伝え、続けて「これからはデータをどう活用するかが、企業にとって競争優位の決め手になる」と強調。そのデータをどう活用するかという点で、「Watsonをお役立ていただきたい」と訴えた。