米国の大手保険会社Nationwide Insuranceは、過去約7年間、アジャイル開発やリーン開発の手法をIT部門に取り入れる試みを続けてきた。プログラムおよびアプリケーションサービス担当最高情報責任者(CIO)Guru Vasudeva氏によれば、同社はソフトウェア開発に年間5億ドル近くを費やしており、事業目標の達成をITとデジタル化の取り組みに大きく依存しているという。
同社は投資額の巨大さや利用しているツールを考えれば、ソフトウェアに関する取り組みを「世界レベル」にすべきだと考えており、アジャイル開発の導入はそのためのステップの1つだったという。しかし、アジャイル開発の効果は限定的だった。
「アジャイル開発を導入したことで、コーディングの速度は大きく向上した」とVasudeva氏と述べている。「しかし、コンセプトやアイデアを実現するスピードは、十分に上がったとは言えなかった」
このため同社は、DevOpsの手法を試し始めた。Vasudeva氏によれば、この取り組みは、連続的デプロイメント戦略を試しながら、一部のプロジェクトの要求に対するアイデアを取り入れ、特定のリリースに盛り込むという形で、まずライフサイクルの前工程から始まった。その後、Nationwide Insuranceは開発とデプロイメントのための新しいツールを導入し始めた。
DevOpsの導入はこれまでのところ、ソフトウェアリリースのスケジュールや、開発者、テスター、その他のスタッフ間の連携の効率を高める効果を発揮していると同氏は言う。さらにNationwideのチームは、コードベースのブランチの作成や、プロジェクトへのチームの割り当てに関してより思慮深くなったという。
NationwideのDevOps導入はまだ進行中のプロジェクトであり、レガシーシステムへ対応も終わっていないが、同社はすでに、DevOpsの採用を検討している企業が参考にすべき、3つの教訓を得たという。
1.1度に全ては変えられない
「わが社のように相当な数のレガシーアプリケーションや新しいアプリケーションを持つ大企業で、ハイブリッドな混合環境を持っている場合、最大のアドバイスは、1度に全ては変えられないということだ」とVasudeva氏は言う。
同氏は、1つか2つのアプリケーションスイートを選び、その範囲でエンドツーエンドの実験を行うことを勧めている。段階的で抑制された実験を行うことで、企業はその取り組みから学習し、問題を特定し、手法を明確に定義し、導入に対する期待を高めることができる。Nationwideは長い間、小規模な範囲で実験を行うという戦略を取っているが、DevOpsだけでなくほかの領域でもうまくいっているとVasudeva氏は述べている。

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