中国ビジネス四方山話

個人情報流出が問題化する中国

山谷剛史 2017年04月12日 08時27分

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 近年中国で個人情報流出についてのニュースを見るようになった。比例するようにネットでもリアルでも、個人情報を営利企業や個人に提出する機会が多くなっているように思う。筆者の個人的経験でも、近年あからさまに情報を収集しようとするショップがリアル・ネットともに増えている。

 個人情報漏えいに関するレポートは充実し、電車やバス内のディスプレイや街の掲示板でもしばしば個人情報漏えいの啓蒙コンテンツは表示されるが、とはいえ「問題は聞いたことがあるけれど、実際対処していない」という人はまだまだ多い。

 セキュリティの補天漏洞響応プラットフォームというところが発表したレポートによると、2016年にはサイトのセキュリティホールにより、60億個を超える個人情報の漏えいがあったと推定している。うち2サイトではそれぞれで5億個以上の個人情報が漏えいした可能性があるという。

 レポートではこの60億もの漏えいした個人情報について「漏えいした個人情報を3つに大きく分けた」としている。ひとつめはサイトやゲームでのユーザーアカウントとパスワードの組み合わせ、2つめは名前、住所、電話番号、身分証番号などの電話実名情報、3つめがどんなサイトを見たのかというサイトアクセス情報としている。3つのうちの1つだけが漏えいするパターンもあるが、2つ以上が同時に漏えいするパターンのほうが多いという。

 漏えい元を業界別で見ると通信キャリア関連の業者からの漏えいが20億個近くで、IT・ネット企業の2億個近く、金融系企業の2億5000万個と比べても圧倒的に多いのだ。ともすればキャリアがサイトのセキュリティに手を抜いていると思われがちだが、セキュリティホール発見時のサイト更新は金融系企業と並んでまめだ。

 逆に最もサイトのセキュリティで更新に手を抜いているのが不動産業界だという。つまり個人情報を狙う犯罪者にとっては、通信キャリア関連サイトはセキュリティ対策が比較的しっかりしているにも関わらず、そこにある個人情報は宝の山だということだ。

 それもそのはず、中国人のスマートフォンに入った情報は本体以上に宝の山だからだ。中国では今や日本以上にスマートフォンをきった生活は考えられず、コミュニケーション用の微信(WeChat)や、支払い用の支付宝(Alipay)や微信に付帯した微信支付(WeChatPay)ほか、EC、配車サービス、フードデリバリ、シェアサイクル、ネットバンキング、投資、レストランの値引きなどをスマートフォンに依存している。

 つまり、ユーザーはそのアカウントを所有しているわけだ。中国ではGooglePlayが利用できないかわりに、さまざまなアプリストアからアプリをダウンロードする。聞いたことがないアプリストアが配信するアプリはセキュリティ面で危険なので、有名なところからダウンロードするというのが、中国人の自衛方法のひとつとなっている。

 セキュリティの穴はサイト自体やアプリにあることもあれば、会社のスタッフが原因であることも。会社で厳格なルール作りをしながら、それでも誰かスタッフが抜け駆けすることがある。保険会社、電信キャリア、ホテル、航空会社、教育現場などで従業員による情報漏洩がおきたことが報じられたが、それは氷山の一角に過ぎない。

 中国にしばしば足を運ぶ日本人が、あるサービスに加入、ないしは切符を買った後に、携帯電話にSMSによるスパムメールが送られるようになったなんてことはよくある話だ。2016年末に中国青年政治学院が発表した個人情報に関するレポートでは、回答者の7割が個人情報漏えいはひどい状況だと回答し、53%がサイト閲覧や検索しただけで情報が漏れた経験があると回答している。

 また個人情報はECサイトでは買えないが、微信やQQで検索を行うと、個人情報販売業者が簡単に見つかると中国メディアは問題視する。購入した企業は個人情報リストを元にスパムメール配信に使うだけではない。身分証明書を取得すれば、それをもとにさまざまなサービスのアカウント情報を変更してしまい、使えなくして持ち主に圧力をかけることもできる。悪徳業者からみれば、中国人のスマートフォンのほうが宝の情報が多く眠っている反面、日本人観光客などの中国外のスマートフォンは魅力がないと感じるだろう。

 近年中国はセキュリティ強化のために実名制にし、電話番号取得には身分証明書を要するようになった。ところが電話番号でひもづけられることから、そこを狙う攻撃や内部からの情報漏洩があり、セキュリティ強化がされていないのではと実名制を疑問視する中国メディアもある。

 実名制につづき、個人情報保護が目的の1つである「網絡保護法(ネットワーク保護法)」などの法を整備しているものの、それでも人の行動を変えるのは容易ではないのか、悪徳業者や内部社員からの漏洩などが続くようで、個人情報漏洩の状況の改善は見られない。

山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター
2002年より中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、アセアンのITや消費トレンドをIT系メディア・経済系メディア・トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に「日本人が知らない中国ネットトレンド2014 」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち 」など。

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