求む、ビジネスエンジニア人材
興味深いのは、文化の変化を両氏共に挙げた点だろう。カナダロイヤル銀行のRoss氏は、「エンジニアになる必要はないが、社内にエンジニアの文化を取り込んでいる」と語る。具体的には、次の3つを進めているという。
- 取り組んでいることがビジネス上の成果に直結するかどうか
- 新しい技術を積極採用して進めるトランスフォーメーション
- イノベーション
2については、「新しい技術をどんどん使ってアーリーアダプターになり、それらを結びつけて何ができるのかを考えている」とRoss氏。代表的なものとして、アジャイル開発、コグニティブ、アナリティクス、APIエコノミーなどのコンセプトをあげる。「例えばGoogle検索をするように、顧客が自分の情報について検索できるようにするなど、顧客が我々のところに来る仕組みを作る」とRoss氏。
3のイノベーションは、2に通じるものだが、「将来を見ながら、IoT、ブロックチェーンなど重要な技術に積極的に取り組む。失敗するかもしれないが、失敗から学んで先行者になる」とRoss氏、カナダロイヤル銀行はカナダでは最大手だが「(国内の)ナンバーワン、グローバルでトップ10に入るには、われわれがトップ10のIT企業になる必要がある」と語った。
Ross氏は「飛び越える(leapfrog)」という言葉を何度か用いたが、そこで重要なのが「レガシー」だ。「レガシー対デジタルなどと言われるが、われわれにとってレガシーは強み。レガシーの中にある機能を取り出して、どうやって顧客に見せるかを考えている」という。Ross氏は半年ほどでモバイルからのアクセスがウェブを上回ると見ており、アプリのリリース頻度を上げるなどモバイル時代に向けた準備を進めているとも述べた。
三菱UFJが新設したというデジタルイノベーション推進部は、IT出身、ビジネス出身が3分の1ずつを占め、残りは中途採用。「業界がわかっているビジネスエンジニア的な人が求められる」と村林氏、「きっちり要件を固めて作ってくださいという時代からアジャイル的な開発が求められており、ビジネスノウハウを入れて、プロトタイプを作って……と一緒になって作る人が必要」と現場の変化に触れた。