ニコチン依存と肝炎の2つの治療アプリを開発中
「医療用アプリはどんどん出てくる。早くやらなければ」と思った佐竹社長は2014年に帰国し、キュア・アップを同年7月に設立した。アプリの開発は、医療費の課題解決にも役立つ。「新薬の開発は一般的に1000億円程度かかると言われているが、その100分の1のコストでソフトを開発できる」。
開発中のスマホ・アプリは2つある。1つは、慶応大学呼吸器内科学教室と共同研究中のニコチン依存症治療用アプリ。佐竹社長によると、3カ月のプログラムの禁煙外来は、合計5回(約2時間の診療時間)の受診をする。問題は受診と受診の間、患者は自宅で禁煙依存症と孤独な戦いをすること。この間に、医師らが訪問するのは難しいだろう。そこにアプリの役割がある。患者の状態に応じて、カスタマイズした日々の指導をする。禁煙指導や服薬の管理、通院の管理だけではなく、医師とマンツーマンで行う専門的な心理治療などの機能を備えているという。なので、プログラム医療機器の対象になるという。
佐竹社長によると、日本では2014年の薬事法改正によって、ソフト単体の規制と承認も始まった。とはいっても、医師が処方として使える承認されたソフトは、米国の100件以上に対して、日本は放射線診断用アプリがある程度。しかも、承認された治療用アプリは目下のところないという(2017年3月)。治験や臨床試験に時間も必要になるからだ。ちなみに、ニコチン依存症治療用アプリの臨床研究は2015年から始めている。
もう1つのスマホ・アプリは、東京大学医学部と共同研究するNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)の治療アプリで、生活習慣を改善するプログラムになる。2016年秋から臨床研究を始めたところなので、あと1年、2年はかかるという。これらアプリは、今の診療が補えないところをサポートするものともいえる。
佐竹社長は、スマホ・アプリを糖尿病や高血圧、うつ病、パニック障害、アルコール依存症などへと横展開も考えている。2人でスタートしたキュア・アップは、設立から3年弱経過し、アルバイトなどを含めて30人弱に増えている(2017年3月)。アプリで治療するビジネスの立ち上げる日が近づている。