米Hewlett-Packard EnterpriseのAruba(HPE Aruba)は、世界20カ国のIoT導入に関する調査結果を発表した。
これによると、アジア太平洋地域(APJ=オーストラリア、中国、インド、日本、シンガポール、韓国)におけるIoTの採用が2019年までに86%に到達する見込みだと分かった。世界平均では85%、日本では63%と予想され、調査対象国中で日本は最下位だった。
調査では、3100人のITおよびビジネス担当の意思決定者にインタビューし、2016年11〜12月に実施された。回答者は、公共部門と民間部門双方の従業員500人以上の組織に所属する。グローバルでの対象国は英国、イタリア、ドイツ、フランス、オランダ、スペイン、スウェーデン、ノルウェー、トルコ、UAE、サウジアラビア、米国、シンガポール、日本、オーストラリア、インド、ブラジル、メキシコ、中国、韓国。 日本の回答者は150人だった。
APJの回答者1150人のうち97%がIoTの言葉は知っているものの、正確な定義や組織にもたらされる価値について明確に理解しているわけではないことも明らかになった。
同地域の組織は、IoT導入の妨げとなる大きな課題のトップ3に「導入コスト」(53%)、「メンテナンスのコスト」(52%)、「従来技術との連携・統合の難しさ(」47%)を挙げた。これはグローバルでの傾向と一致している。また、同地域の組織の88%がIoT関連でのセキュリティ侵害を一度は経験しており、中東欧州アフリカ、米州地域に比べ世界で最も高い割合となった。20カ国の回答者全体では、半数以上の回答者がIoT戦略立案上の主な妨げ要因に外部からの攻撃を挙げている。
IoT導入における事前の期待度と実際の結果については、ビジネスリーダーの35%が「IoT導入後に大幅に増益した」と回答している。これは、「増益を見込んでいた」と回答したリーダー(15%)よりも20%多い結果となった。日本では、収益性の「大幅な向上」を期待する人(11%)に対し、実際に「大幅な向上」が見られたと回答した人は19%と、1.7倍の割合になった。
また、IoT戦略によってセキュリティが大幅に改善すると期待した経営幹部は35%だったが、実際の結果では、IoTを導入した経営幹部の50%がセキュリティ上の大きなメリットを実感している。
業種別では、製造業の回答者のうち62%が既にIoTを導入しており、そのうち83%が事業効率が向上したと回答、80%が組織全体にわたる可視性の向上を実感している。最も効果的な活用事例は、製造プロセスのモニタリングとメンテナンス。一方、IPベースの監視カメラによる物理的セキュリティを確保する用途は6%だった。しかし、将来の導入予定としては、32%にまで急上昇している。
医療は3番目に進んでいる業種で、全世界の医療組織の60%が施設内にIoTデバイスを導入している。同分野の経営幹部の42%が、IoTの最大の用途としてモニタリングとメンテナンスを挙げている。
小売業界でIoT技術を利用していると回答したのは49%。そのうち81%がカスタマーエクスペリエンスが向上したとしている。また、店舗内位置情報サービスは、モニタリングおよびメンテナンスと併せて、IoTの最も重要な導入事例として評価されている。10社中4社の小売企業が、活用事例上位3つの中に「監視」を挙げた。
IoTによるデータ活用については、IoTを採用した組織のほぼ全て(98%)が、データ分析は可能だと考えている。「IoT機器から収集されたデータから価値を引き出すうえで、組織にとって最も大きな課題は何か」との質問に対し、ドイツを除く全ての国で「大量のデータを管理すること」との回答が最も多く、グローバル49%、日本49%、米55%となった。
また、既にIoT導入を開始している組織の回答者に対して「IoTによって得られるデータの利用方法」を尋ねたところ、「企業ネット内のIoT機器データを抽出分析し、得られた洞察をビジネス判断やプロセス向上に利用中」と回答したのはアジア平均65%、グローバル平均61%、日本54%、米65%、ドイツ56%となった。