課題解決のためのUI/UX

IoTとしてのスマートハウス--Amazon AlexaのUXを分析する - (page 2)

綾塚祐二

2017-05-10 07:00

ウェブサービスへのインターフェースとしてのスマートホーム

 生活の中の多くのものごとにインターネット越しのやりとりやウェブサービスが入り込んでいる現在では、スマートホームにも、それらへのインターフェースとしての機能が当然求められる。

 PCやスマートフォンなどの端末に向かってウェブサービスなどを利用するのでなく、家の中の環境の一部として利用できる、ということである。以前取り上げたAmazon Dash Buttonは単機能であり「スマート」さは高くないが、ウェブサービスへのインターフェースとしての環境のイメージとしてはとても理解しやすい例であろう。

 Amazon Echo(及びその音声エージェント部分のAlexa)やGoogle Homeも、家の中の環境にインターフェース機能を溶け込ませるためのシステムである。音声入出力インターフェースというのは昔から考えられ、フィクションの中では多く登場してきたが、近年の音声認識技術とネットワーク環境の進歩でようやく充分に実用的になってきた。

 音声入力インターフェースの大きな難点の一つは、コンピュータに対する入力として解釈すべき・してよい音声(発言)と、そうでない音声との区別である。

 「入力」の場合には何かの機器のボタンを押しながら話す、という方法は多くの場合確実な手段であるが、環境にインターフェース機能を溶け込ませる、という意味では、機器の場所に縛られたり、機器を取り出すという動作が加わったりするのでいまいちである。

 そこで使われるのが「日常の会話ではまず出てこない(であろう)フレーズ」をトリガーにする、という方法である。"Hey, Alexa"や"OK, Google"、"Hey, Siri"など、「呼びかけ」的なものが用いられている。

 しかしこの方法にも欠点があり、たとえばリビングで見ているテレビの音声に反応してしまう、といったことが起こる。

 親の持っているスマートフォンに子供が声を掛けて勝手に電話する、といった話も聞く。

 「声」を登録しておき認識し、そのユーザー以外使えないようにする、などの対策もあるが、音声合成や録音されたものの利用なども考えうるので、万全とは言えない。

 利便性と安全性、さまざまな要素が絡んだ上でのUXのバランスが求められるので、多くのユーザーにとって満足のいく解決策が出て来るまでは、まださまざまな探索が必要であろう。

 音声以外にジェスチャなどでも、入力とそうでないところの切り分けをどうするか、という問題は存在する。100パーセント確実に切り分ける、というのは難しいので、ヒューマンエラー対策と同じで、認識された意図の確認の手段や、意図と違う反応をしたときの訂正・修正の手段をいかに確保するか、ということも考慮にいれてデザインすべきであろう。

 過つは人の常であるが、人に近づいたコンピュータもまた(ユーザーから見て)間違いを犯しうると考えたほうが(少なくともデザイン上は)よい。

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