KDDIは、TELEHOUSEブランドで展開するデータセンター事業で、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azureなどのパブリッククラウドと専用線で直接接続できる「TELEHOUSE Cloud Link」の提供を日本で開始すると4月21日に発表した。「顧客のマルチクラウドの要望に応える」と説明する。
「データセンター」ーーITに関わる人が日常のように耳にする言葉だが、専用の建物を建てて通信キャリア中立のデータセンターを世界で最初に始めたのは、日本のKDDIだという。一般にはあまり知られていないが、データセンターを含む「ICT」は同社のグローバル事業において堅実な成長基盤という位置付けで事業を成長させてきた(このほかには、「コンシューマー」「キャリアビジネス」がある)。KDDIのグローバルICT事業について4月21日、執行役員グローバル事業本部長の曽雌博之氏が説明した。
データの増加に伴い、データセンター市場も成長が見込まれている。データについては、データセンターのIPトラフィックは2015年から2020年まで年平均成長率約27%で成長し、2015年の4.7ゼタバイトから2020年には15.3ゼタバイトと3倍以上に拡大することが見込まれている(Cisco Systemsの「Cisco Global Cloud Index」より)。データセンター市場そのものも、同期年平均成長率10%で成長、2020年に457億5500万ドル市場になることが451 Researchにより予想されている。
“TELEHOUSE”ブランドで進めるKDDIのデータセンター事業の歴史は古く、1989年にさかのぼる。同年、KDDIは米ニューヨークに最初のデータセンターを立ち上げ、翌年には英ロンドンに2号となるデータセンターを設置した。
当時、通信キャリアが自社向け設備を置くサイトの一部を外部に貸すという形態はあったようだが、曽雌氏によると、顧客にサーバなどの設備を貸すことを専用とした建物を建て、さらには自社のネットワークではなくてもいいという”キャリア中立型”を持ち込んだのも、KDDIが初だったとする。
この“キャリア中立性”は、その後のインターネット普及時に、ISP、コンテンツプロバイダーらがTELEHOUSEを選ぶ理由となった。

KDDI 執行役員グローバル事業本部長の曽雌博之氏。2017年3月までTELEHOUSEヨーロッパ社長を務めた。
現在、KDDIのデータセンターは世界13地域、24都市、48拠点に成長しており、総床面積は東京ドーム10個に相当する448000平方メートル。設備を利用する顧客数は世界で3000社を数える。現在、売上高ベースでは世界第5位、サイト単位の事業者接続数では英ロンドン・ドックランドのTELEHOUSEが世界第1位、フランスのボルテアに構えるTELEHOUSEは第8位だ。
規模だけではなく、サービスや機能も曽雌氏が胸を張るところだ。例えば信頼性。TELEHOUSEでは300以上の厳しい独自共通基準を設けているが、その信頼性を実証するのが、2012年にニューヨークを襲ったハリケーンサンディだ。この時、KDDIのTELEHOUSEは唯一稼働を続けたデータセンターだったという。
曽雌氏はダウンを免れた理由として、1)水没しない設計、2)自家発電に必要な燃料の供給体制、運用スタッフの確保の2つを挙げる。日本でも2011年の東日本大震災時、すべてのデータセンター(全国9都市、21拠点)が継続安定稼働を実現したという。
接続性では、現時点で合計750キャリアと直接接続が可能であり、3000社のISP、キャリア・モバイル事業者、コンテンツプロバイダといった”コネクティビティパートナー”を有する。つまり、これらの企業とTELEHOUSE内で接続可能であることを意味する。これらと構内接続、あるいは上位でつながることができれば遅延を抑えることができる。これは今後ビックデータ、IoTなどでデータの収集、解析、配信が重要になる中で、大きな強みになるとみる。