ネットワーク外部性は、ユーザーが増えれば増えるほど、ユーザーがそのサービスから得られる価値が高まることを言う。Facebookは1人で利用していても意味がなく、利用する友人・知人が増えるほど、多くの人とFacebookを通じてコミュニケーションを取ることができ、ユーザーが得られる価値は高まる。
ほとんどの友人・知人とFacebookでつながっている状況で、新しいコミュニケーションサービスが登場しても、それを積極的に利用する動機は乏しい。ネットワークの外部性は、それが働く規模まで成長したサービスにとって、競合に対する強力な参入障壁となる。
なぜAPIを提供するのか
ネット企業が市場の独占を目指すのであれば、APIの提供も最終的にはそれが目的であると考えるのが自然である。APIにより自社サービスが他のサービスに組み込まれることで、より多くのユーザーに到達することが可能になる。
ユーザーの中には、もしかしたら自社サービスを直接利用するようになる者がいるかもしれない。筆者は、かつてはYahoo!の地図サービスをよく利用していたのだが、さまざまなウェブサイトに埋め込まれたGoogleマップを使ううちにそのインターフェースに慣れてしまい、現在はGoogleマップを中心に利用している。ユーザー層を拡大する手段として、APIの提供は有効な手段と思われる。
自社サービスの向上を目的としてAPIが提供されることもある。規模の経済を追及するため、ネット企業はコアとなるサービスに注力する。
ただし、コアサービス以外にも、ユーザーの満足度向上のために求められる機能やコンテンツは存在する。それらを全て自社で開発していては、エンジニアが何人いても足りることはない。
そこでAPIを開放し、サードパーティがユーザーに対してサービスやコンテンツを提供できるようにする。MobageやGREEは、ユーザー情報やソーシャルな機能を利用できるAPIを提供し、多くのサードパーティがゲームを供給したことで、ゲームプラットフォームとしての魅力が高まり、多くのユーザーの獲得に成功した。サードパーティもその恩恵を受け、ソーシャルゲーム業界は大きく成長することになった。
APIの活用が利用企業にとって有益であれば、最終的には提供企業を中心としたエコシステム(生態系)が形成される。スマートフォンであれば、それぞれAppleとGoogleを中核企業とする2つのエコシステムが存在し、両社が提供するAPIを使い多くのサードパーティがアプリを開発することで、各エコシステムの競争力を高めている。
今から新しいOSを開発し、スマートフォンの生産に参入しても、両社に割って入るのは難しいだろう。Microsoftほどの企業ですら、スマートフォン領域ではエコシステムを構築できず、OSのシェアをほとんど獲得できていない。APIを提供する究極の目的は、自社を中核企業とするエコシステムの確立にある。