脳から思考を読む技術で「閉じ込め症候群」患者とのコミュニケーションを実現 - (page 2)

Jo Best (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2017-05-05 08:00

 このシステムでは、ある領域と別の領域に供給される血液の量の違いを、近赤外分光分析法(fNIRS)を使用して計測し、研究者や医療スタッフが理解可能な画像に変換する。これにより、センサキャップを装着した完全閉じ込め症候群の患者に質問をし、脳のどの領域が反応するかを観察することで、患者がイエスと言っているのかノーと言っているのかを知ることができる。

 ヴィースセンターでは、徐々に筋肉を動かす力が減退し、最終的に完全閉じ込め状態に至る筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者4人を対象に、このシステムの試験を行った。肯定的な反応や否定的な反応に対応する脳の部位の境界を特定するため、例えば「パリはアメリカの首都ですか?」などのイエスかノーかで答えられる質問をし、患者は正しい答えについて考えるように指示される。

 イエスとノーを表す領域は、各患者の脳の同じ部分に現れるが、ヴィースセンターが独自に開発した分析パッケージを使用することで、学習によって各患者の領域の形の特徴を特定できるという。

 ヴィースセンターでこの研究プロジェクトの責任者を務めているNiels Birbaumer教授は、米ZDNetに対して、このソフトウェアは、「まず『イエス』と『ノー』に反応する領域の形が明確に異なるかどうかを判別し、これが明確に異なる場合にのみ、コンピュータは信頼できるメッセージとして『イエス』か『ノー』かを判断する」と述べている。

 「ただし、これは患者によって異なる。私が『イエス』と考えるときと、あなたが『イエス』と考えるときでは、現れてくる領域の形はかなり違っている」と同氏は説明する。

 各個人に合わせた調整が終われば、このシステムを使って、友人や介護者、医療スタッフなどが、誰でもイエスかノーかの質問をして、答えを得られるようになる。医療スタッフは、ALSの患者に対して、うれしいかどうかや、治療を継続したいかどうかなどのいくつかの重要な質問を尋ねてみた。その答えのいくつかは、予想外のものだった。

 「われわれや家族が驚いたのは、これらの患者の生活の質は非常に高く、この病気やこの症状が鬱状態を引き起こすと考えたり、このような病気の患者は生きている価値がないと考える理由はないということだ。そのような考えは間違っていると、患者が教えてくれた」とBirbaumer氏は言う。

 このシステムは5~7kgにまで小型化されたため扱いやすく、在宅看護を行っている患者とコミュニケーションを取りたい場合にも利用できる。

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