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Rethink Internet:インターネット再考

インターネットの最大の利点は「非最適解が持つ価値への気付き」 - (page 3)

高橋幸治

2017-05-04 07:00

 日本列島も全く同様であった。海という柔らかい障壁を持ちつつ、いわば大陸の南北、さらに東南アジア、ポリネシアの島々にいたる懸橋として、日本列島にはきわめて古くから、東西南北の海を通じて人々の出入りがきわめて活発であった。

 インターネットの最も効果的な活用法としてユーザーが望む情報と対象となるデータとの効率的なマッチングが挙げられるけれども、人間は常に欲望と対象の無駄のない一対一対応を望んでいるわけではない。

 重要なのはむしろ最適解から微妙に外れた情報との偶然の出会いであり、目的外の情報が目的内の情報とどれくらいのズレを孕んでいるかという差異の認識である。

 これは時計が実のところ現在の時刻を知るためのものではなく、ある過去からの時間の経過、もしくはある未来までの時間の差分を知りたいということと同様だ。

 地図における現在地の確認もまったく一緒で、いま自分がどこにいるかを知りたいという欲求は、本当のところ、目的地との距離や他の地点との位置関係を知りたいということなのだ。

 多様な情報に陸と海との境界で出会い、陸と海との沿岸において文化が醸成される……。

 あらゆるインターネットのサービスは結局のところ、マッチングの精度を努力目標や宣伝文句としつつも、実質的には非最適解の価値をユーザーに知らしめることで人間と情報との関係を豊穣なものにしており、そこにこそインターネットの最大の魅力がある。

 栄養価の高い雑多な食物(=情報)の採集には、陸と海の境界としての沿岸をさまよい歩く狩猟採集民的な非合理性や非効率性こそが不可欠なのだ。

高橋幸治
編集者/文筆家/メディアプランナー/クリエイティブディレクター。1968年、埼玉県生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒業後、1992年、電通入社。CMプランナー/コピーライターとして活動したのち、1995年、アスキー入社。2001年から2007年までMacとクリエイティブカルチャーをテーマとした異色のPC誌「MacPower」編集長。2008年、独立。以降、「編集=情報デザイン」をコンセプトに主にデジタルメディアの編集長/クリエイティブディレクター/メディアプランナーとして企業のメディア戦略などを数多く手がける。本業のかたわら日本大学芸術学部文芸学科、横浜美術大学美術学部美術・デザイン学科にて非常勤講師もつとめる。「エディターシップの可能性」を探求するセミナー「Editors' Lounge」主宰。著書に「メディア、編集、テクノロジー」(クロスメディア・バブリッシング刊)がある。

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