金融(Finance)とテクノロジ(Technology)の造語であるFinTech。2015年にはメガバンクグループでFinTech専門組織の設立が相次ぎ、FinTech協会も設立された。2016年には金融庁を中心とした法制度の整備が進んだことも記憶に新しい。FinTechに対して、金融の現場ではどのような取り組みがされており、どこに向かっているのか、識者5人が語る。参加者は以下のとおり。今回は第2回(第1回)。
参加者(自己紹介順)
- 藤井達人(三菱UFJフィナンシャル・グループデジタルイノベーション推進部シニアアナリスト)
- 大久保光伸(みずほフィナンシャルグループデジタルイノベーション部シニアデジタルストラテジスト)
- 平手佑季(三井住友フィナンシャルグループ ITイノベーション推進部部長代理)
- 大平貴久(トーマツベンチャーサポートアドバイザリーサービス事業部 FinTechリーダー)
- 落合孝文(渥美坂井法律事務所・外国法共同事業パートナー弁護士)
金融機関で起きている変化とは
落合氏:私はFinTech協会で活動をしていて、全銀協のAPIの検討会も含めて、メガバンクの動きがいろいろな銀行をリードしている印象を受けています。また、メガバンクを先頭にして、API接続に関するリリースが続いている中で、日本のFinTechの加速を感じます。制度も整備しつつチャレンジを進めている段階ですが、銀行にいて、具体的な反響や変化を感じられることはありますか。
三菱UFJフィナンシャル・グループデジタルイノベーション推進部シニアアナリスト 藤井達人氏
藤井氏:私は4年前に中途採用で入社しており、前職は外資系IT企業でコンサルタントとして働いていました。「銀行は堅いカルチャーだし、仕事をしていくのは大変ではないか」とよく言われますが、堅いカルチャーを柔らかく変えることが仕事だとは思っていません。
言い方が難しいのですが、大企業では業績目標を達成するために、その中にある構造的な目標を達成しようとします。すると、過去の成功事例の延長線上で達成しようとするのが普通の人の発想です。
そうした中では、効果が見えるかわからない新しいことにリソースを割くことが難しいのは当然です。堅いカルチャーが悪いという文脈ではなく、時代がどう変化していて、新しい仕事、新しいやり方はこうなっていくという道標を示すのが、われわれのような部署や人間の仕事だと思うのです。だから、オープンイノベーションなどでベンチャーなど外部の人たちとマッチングさせているのは、新しい方向をセットしていくイメージなんですね。
数年経って、進め方がなんとなく分かってきました。社内の人が持っている課題感に近しい外の力を見極めてマッチングすることが重要であると感じています。
そこからいくつか成功事例を作っていくと、だんだん伝わっていきます。アクセラレータプログラムなどをやると「こういうことができるらしい」というイメージができあがっていく。このモメンタム(勢い)をずっと続けていくのです。