Oracleは5月4日、本社のある米カリフォルニア州レッドウッドショアでメディア向けイベント「Media Day」を開催した。初めてのイベントで、世界から集まった約50人を前に最高経営責任者(CEO)のMark Hurd氏がクラウド、アプリケーション、プラットフォームと自社のすべての事業について戦略と現状を説明した。
本社にある顧客向けの訪問センターで行われたイベントでHurd氏は最初に登壇し、業界動向とOracleの戦略を俯瞰した。
Mark Hurd氏
まずはクラウド。業界全体でクラウドへのシフトが起こっており、オンプレミスを展開してきたOracleも、数年前からクラウドへの移行を進めている。SaaS、PaaS、IaaSとポートフォリオの構築を進めており、「CEO就任当初は37億ドルだった研究開発の投資が、今年度は50億ドルを上回る」とHurd氏は言う。
開発、テスト環境はすべてクラウド化
クラウドへの移行はすべての業界で起こるとHurd氏は見ており、例えばIT支出の3割近くを占める開発・テスト環境は、すべてクラウドに移行するとしている(Hurd氏は2016年の「Oracle OpenWorld」で、「2025年までに開発・テスト環境の100%がクラウドに移行する」との予想を発表している)。
Hurd氏はクラウドへの移行について「10年がかりの移行をOracleが主導していく」と話した。
アプリケーション側では、ベストオブブリードとスイートの両輪がOracleの戦略であり差別化だ。ベストオブブリードとは、ERP、HR、セールスなど各アプリケーション分野で最も質の高いものを集め、全体としてのシステムを構築する手法を指す。
これが共通のデータモデルを持ち、スイートのように振る舞うことで、重要なデータをアプリケーション間で共有し、業務効率を改善できる。「アプリケーションでは長年、プラットフォームがすべて異なるため、アプリケーションの 間でのデータ共有が難しいことが課題だった」とHurd氏。Oracleは10年がかりで書き直した「Fusion Applications」「Oracle Cloud」を通じてこの問題を解決したと説明する。
アプリケーションのクラウド化となるSaaS、データベースやJavaなどのプラットフォーム(PaaS)、それにコンピュート、ストレージなどのIaaSの3つのクラウドにフォーカスする、というのがOracleのクラウド戦略だ。
競合はAmazon Web Services、Microsoft、Googleなどだが、Amazonはインフラにフォーカスしているが、Oracleはすべてを展開している点が異なると分析する。また、「オンプレミスとの共存は当面続く」とし、「両方を提供できるのはOracleだけ。オンプレミスとクラウドの間でデータをやりとりできる。これは重要な差別化要素だ」と強調した。