ゴールデンウィークは当然釣り三昧と思っていたら、風邪で体調を崩して釣りに行けず。もともと、釣りは妄想力のスポーツなので、ちょっと妄想をエスカレートさせてみる。
ドローンと言えば、空を飛ぶものと思うのが普通であるが、釣り師には響かない。やっぱり、水中ドローンである。
この度注文受付が開始された「PowerRay」は、水中ソナー、4Kカメラなどを搭載しているだけでなく、オプションで針を取り付けることができる。写真にあるように、釣竿から延びる糸を取り付けて、魚のもとまで届けさせるのである。
釣りのイノベーションは、元来センサテクノロジの発展だ。フィジカルには、できるだけ細くて強い糸を開発し、魚の反応をよりダイレクトに釣り師の竿に伝える。そして、その竿も、魚のタイプや釣りのスタイルにあわせて確実に魚のあたりを捉えて針掛かりさせるよう日々改良が加えられているのである。そして、魚のいる場所を確実にとらえるのが魚群探知機の超音波である。
そして、この水中ドローンは、センサ情報だけではなく、リアルタイムに魚の状況を4K映像で手元のスマートフォンへ伝えてくるのである。もしかすると、新手の船宿で「ドローン船」というのが出てきて、全員が水中ドローンで大物を狙う、みたいなのもありかもしれない。夏になると「カツオ一本釣り船」とかが出るのと同じような乗りで。
じゃあ、自分が「ドローン船」に乗るかというと、あまり興味が湧かないのが本音である。これは、筆者にとっての釣りは魚との心理戦を楽しんでいるところがあって、ビジュアルで魚が見えてしまうと、かえって興ざめしてしまう気がするからである。
しかし、そんなこと言っていると、「ドローン船」がざくざく大物を釣りあげている横で「旧来船」ではまるで釣れない、なんてことが起きるかもしれない。かつて、こうした釣れないリスクを抑制する守りのイノベーションとして、小物をでかく見せる「FishyHands」というガジェットがKickstarterに登場したこともあるのだが、資金集めに失敗してあえなく撃沈してしまったことが思い起こされる。
それにしても、ビジネスにおける新旧交代もこんな風に起きるのだろうか。
例えば、釣り具開発のビジネスをやってたとして、「ドローン船」なんてありえんだろう、なんて言いながら、せっせとFishyHandsの開発に取り組んでいるうちに時代が変わってしまうみたいな。釣り具の開発には釣り好きが多く関わっていると推察されるので、これを乗り越えるのは容易ではない。
しかし、FishyHandsの運命を見るにつけ、そんなの釣りじゃないだろ、みたいなアイデアを認めることができるのが、イノベーティブな組織といことだろう。個人的には、釣りの状況に関するさまざまな情報(天気、気温、水温、潮の澄み具合、潮流などなど)をデータとして取り込んで、その日のベストな釣り方を提案してくれるAIサービスが欲しい。
飯田哲夫(Tetsuo Iida)
アマゾンウェブサービス ジャパンにて金融領域の事業開発を担当。大手SIerにて金融ソリューションの企画、ベンチャー投資、海外事業開発を担当した後、現職。金融革新同友会Finovators副代表理事。マンチェスタービジネススクール卒業。知る人ぞ知る現代美術教育の老舗「美学校」で学び、現在もアーティスト活動を続けている。報われることのない釣り師