知覚のトビラ--AIが拓くICTの未来

AIが構造化する超データ社会-- デジタル化によるカオス化と収束 - (page 3)

日塔史

2017-05-17 07:00

デジタル情報は越境・融合し「役職」「企業」「産業」がカオスに

 この傾向はIT業界、広告業界といった「産業界」に限った話ではなく「企業内」でも同様だろう。筆者がテクノロジ系の部署に社内異動した2012年頃、「CIOとCMOの役割が変わり機能が重複するが、うまく融合することで企業の競争力が増す」という議論が活発になされていた。

 そしてこれからデジタルテクノロジの活用は、IT部門とマーケティング部門の垣根を越えるにとどまらず人事部門(HRテック)や教育部門(エドテック)にも及ぶのだろう。


 「部門」だけではなく、「情報インフラ」もすでに内側と外側があいまいだ。「外側→内側」の製品やサービスとしては、すでに外部クラウドサービスの利用は普及しきっている。

 逆の「内側→外側」のソリューション化に関してはGoogleやFacebookのAPI公開の手法(例えばGoogleのTensorFlow)を見ても、ツールをまずは社内インフラとして開発し、頃合いを見計らって一般公開するのはもはや常套手法といえないか。

 こうなると、ICTの活用は従来からの「役職」「企業」「産業」をも超えてしまう。メディア業界ではデジタル化によって早くから「メディア・コンバージェンス」(注3)が提唱されていた。

 コンバージェンスとは「輻輳、集中、収束」といった意味で、筆者自身は「多数のものがお互いに融合して一つの混沌としたものとなる」イメージでとらえている。

 飛躍を許していただけるのであればハクスリーの「偏在精神」論とも通じるものがあるだろう。そして、コンバージェンス現象はもはやメディアに限った話ではないことは今まで見てきたとおりである。

<後編に続く>

 (注3)2006年にMITのヘンリー・ジェンキンスが「Convergence Culture」を発表したのが始まりと思われ、情報・通信技術・コンピュータネットワーク・メディア・コンテンツなどが相互接続を引き起こす現象を指す。
日塔史(にっとう ふみと)
(株)電通 ビジネス・クリエーション・センター 主任研究員、 (株)電通ライブ 第1クリエーティブルーム チーフ・プランナー、 日本マーケティング協会 客員研究員。
現在、「ヒアラブル」をテーマにソリューションを開発中。 日本広告業協会懸賞論文「論文の部」金賞連続受賞(2014年度、2015年度)。 電通報ほか寄稿・講演多数

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