Gartner Summit

AI活用に向けてやるべきは、「得意なものと不得意なものを押さえること」

日川佳三

2017-05-09 07:00

 「これまでは時間帯や場所などの軸で仕事を分類してきた。これからは新たな分類の軸として、『人工知能(AI)にやらせることができるのか、AIにはできないことなのか』という着眼点が加わる。だから、AIが得意なことと不得意なことを理解しておくことが大切だ」。

人工知能学会の会長を務める山田誠二氏''
人工知能学会の会長を務める山田誠二氏(国立情報学研究所や総合研究大学院大学の教授および東京工業大学の特定教授も務めている)

 ガートナー ジャパンが開催した「ITインフラストラクチャ&データセンターサミット2017」では4月26日のゲスト基調講演に、人工知能学会会長の山田誠二氏が登壇。「人工知能の現状認識と未来への提言」と題して講演した。

 山田氏はまず、ガートナーが2016年9月に作成した「日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2016年」を提示し、AIが過度な期待のピーク期にあることを紹介。いま、まさにAIがブームとなっていることを裏付けた。

 講演の前半では、AIの目標を「人間並みの知的な処理をコンピュータ上で実現すること」と説明し、AIの歴史をひもといた。AIのアプローチには、「強いAI」(単独で人間と同等のAIを目指す)と「弱いAI」(あくまでも人間をサポートする知的システム)の2種類があり、歴史的には強いAIを目指したものの、難しいことから弱いAIへ移行している。

 「『AIが人間を代替する』というように対立を煽るのはよくない」と山田氏は指摘する。「どう考えても、生物である人間を超えることはまだない。『AIは単なるプログラムである』という基本的な理解が必要だ」(山田氏)

 AIの歴史は大きく、第1次ブーム(1950~1960年、黎明期)、第2次ブーム(1970~1980年、記号・論理全盛、エキスパートシステムなど)、冬の時代(1990~2005年)、第3次ブーム(2005年~現在、統計的機械学習が牽引、データマイニングやディープラーニングなど)に分かれる。

ディープラーニングが現在の第3次ブームを牽引

 現在の第3次ブームは、ニューラルネットワーク、特にディープラーニングが牽引している。人間の脳をモデル化するというアプローチだ。計算資源と大量データがなけば、成果を出せないが、近年になって計算資源とデータが急拡大してきたために実用化されてきている。

 1980年代のAIは、記号・論理がベースで、人間が読める知識を扱うという可読化が重視されていたという。この一方で、ニューラルネットワークはニューロン間の情報伝達に使うシナプス結合の重みに対応する数値を扱う。数値が高くなると結合が強くなり、学習によって数値を更新していく。学習結果は高次元の配列なので、人間が見ても理解できず、可読性は低いという特徴がある。

 ディープラーニングの少し前には、データマイニングと呼ぶ、機械学習をビッグデータに適用する方法が流行った。POS(販売時点情報管理)データを分析して「おにぎりを買った人はお茶も買う」といった関係を見出して販売につなげる、といった使い方だ。

 機械学習はAIの全てではないが、AIを理解するための枠組みの1つとなっていると、山田氏は指摘する。

 機械学習で一番に応用が進んでいるのが、教師ありの分類学習だ。犬の画像と猫の画像を、犬や猫のラベルと一緒に与え、犬と猫の画像はどこが違うのかをコンピュータが見つけて判別関数を生成するといったものだ。機械学習ではこの他に、ロボットがどういう状況でどういう行動を取ればいいかを学習する行動学習や、似てるもの同士を教師なしで勝手に分類してクラスタ化するものなどがある。

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