AI時代の働き方

デジタルはコスト削減に効くか--AI時代の働き方(2)

笛木 克純(A.T. カーニー プリンシパル)

2017-05-11 07:30

コスト削減分野でのデジタル活用

 「人材マネジメントでのデジタル活用」というと、タレントマネジメント、オンライン評価システム、本人が気づいていない適性の発見など、付加価値創出の側面に注目が集まる。しかし、このような付加価値は定量化が難しく、ゆえにこの分野への投資を躊躇させている要因ともなっている。この連載では、デジタルの投資対効果が見えやすいコスト削減分野から議論をはじめたい。

 国内市場が収縮する中、日本企業にとってコスト構造改革は避けて通れない課題である。コスト費目で言えば、人件費や労務費を主管する人事部も、コスト削減には大きな貢献が求められている。

 しかし、言うまでもなく、人件費は多くの日本企業にとって「聖域」である。軽々に手を付けられ分野ではなく、それゆえ、コスト構造改革の議論の中でも人事部は蚊帳の外に置かれることが多い。

人事部のコスト削減への貢献?

 今回の議論では、人材マネジメント上発生するコストの内、特に採用コストを取り上げたい。人材募集媒体への出稿や、人材紹介会社に支払う手数料などの金額規模は無視できない。

 しかし、コスト削減に取り組んだとしても、多くは採用自体のコストに着目した取り組みが多い。人材募集媒体の見直し、人材採用会社との交渉、採用プロセスの自動化などは、すでに多くの企業で取り組まれている。

 採用そのものの必要性の低減、もっと言えば「無駄な」採用コストの低減である離職率の低下には、多くの企業で取り組みが遅れている。その一因には、採用の担当者と採用後研修の担当者、その後のフォローアップの担当者がそれぞれ異なっていることにある。

 その結果、多大なコストをかけて採用した新人を放置してしまい、その結果早期離職を招き、さらなる採用コストの投入が必要となる、というサイクルに多くの企業が陥っている。

 また、「うちの会社は人を大事にしない!」というように、この問題は、多くの企業で認識はされているものの、担当が分散しているために、責任者が明確ではなく、抜本的な対策が取られにくい。もっと言えば、そもそもこの不整合により生じているコスト自体が把握されていることもまれであり、多大な苦労を通じて捻出した媒体費用が成果を生み出すことなく失われしまっているのである。

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