「マイデータ」の時代

「私の情報は広告のためのものではない」--個人主導データ流通がもたらす変革 - (page 3)

伊藤 直之(インテージ)

2017-05-16 07:00

パーソナル情報は私のものだ

 PDS/情報銀行の利用意向がある回答者の特徴としてまず1つ目に、個人に関するデータの所有者意識が高いという特徴がある。

 IoTが普及するにつれ、そこから発生するデータは誰のものかというテーマが取り上げられるようになってきている。製造業向けセンサから発生する稼働データの場合はセンサメーカーと工場の2者での契約で決められる。一方、特に個人が保有するIoTデバイス(コネクテッドカー、スマート家電など)から生成されたデータは個人情報の問題とも相まって議論され始めている。

 データ所有権というものは実際には存在せず、データの帰属に関しては契約で取り決めされることが多いが、そのほとんどが付合契約によってほとんど読まれることのない利用規約やプライバシーポリシーによって定められており、生活者の意識と乖離していることが多い。

 今回の調査では、単純に「誰のものだと思いますか?」と感覚的に回答してもらっている。この意識が高いパーソナル情報というのは、企業が適切にデータを収集して利用したとしても、「そんな利用目的に同意した覚えがない」と炎上しやすいものであると言えるのではないだろうか。


PDS/情報銀行利用意向のある回答者のデータ所有意識

 20種類のパーソナル情報に対して「どちらともいえない」を含めた5段階で聞いたところ、全てにおいてPDS/情報銀行の利用意向がある層の方が、企業のものではなく自分自身のものであると答えた割合が高い。

 その割合が高い情報ほど、たとえ適法にデータを収集し特定の個人が識別できないように利用したとしても、生活者があずかり知らないように利用されているという印象を与えれば批判は免れず、レピュテーションリスクが高まってしまうのではないか。

自分のプライバシーは自分で守る

 2つ目の特徴として、自分自身でプライバシーを保護する意識が高い。会員登録や会員カード作成をしないようにしたり、登録したとしても登録情報を減らしたりするなどのオフラインにおける行動や、オンライン活動でプライバシーを守る方法について20種類挙げて聞いたところ、その数が多ければ多いほどPDS/情報銀行の利用意向が高かった。


PDS/情報銀行利用意向のある回答者のプライバシー保護意識

 一方で、これらの手段を知らない数が多い(プライバシーに関するリテラシーが低い)ほど利用意向が低かった。これは、企業を信頼しているから必要がないということだけではなく、そもそもどのようなデータが企業に収集され第三者へ提供されているかを知らないということに帰結する。この状態のまま更にパーソナル情報の活用が進んだ際には、炎上リスクが高まってしまうのではないだろうか。

 生活者のプライバシーリテラシーを含む"デジタルリテラシー"を高めることがPDS/情報銀行の普及には必要であり、企業にもその責務があると考える。

 実際、さまざまな理由でプライバシーポリシーや利用規約に記載される収集情報や利用目的を明確に記載していないサービスやアプリが存在する。これらを簡潔に説明できれば、生活者の理解が促進され、リテラシーの向上だけでなく、その企業に対する信頼も得られるのではないだろうか。

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