イノベーションを起こす「デジタル人類」

デジタル化の波は不可逆--「ヒトの摂理」に反しないサービスが生き残る - (page 3)

林大介

2017-05-23 07:00

 建機に乗り始めたばかりのほぼ素人に近い作業員が、習得するのに通常5年はかかると言われている法面整形を3日で成し遂げてしまうというストーリーだが、実はその布石として建機のデジタル化という茨の道を歩んできた。


Smart Constructionの動画から引用

 建機のアーム部分の動作・操作をデジタル化するという決断がこの奇跡を可能にしているのだが、この決断で一時的に多くの現場のユーザーの支持を失ったそうである。

 現場のユーザーはアナログ的な感覚を大事にしており、新しい操作感覚がなじまなかったのであろう。ここにデジタル人類と”覚醒前の”普通の人類の戦いが垣間見えるのである。

 もっと身近な例は音楽コンテンツである。筆者はこの数年CDを買った記憶がない。が、音楽は好きであるし、よく聞いている。今の10代の若者に「CCCD(コピーコントロールCD)って知ってる?」と聞いてみると何が起きるだろうか(最後のCDの部分すら伝わらない可能性すらあるが)。

 他のコピーコントロール系の技術・話題で言えば、地上デジタル放送の「コピーワンス」や「10回までコピー可能」なども挙げられるが、正直なところ今この制限を気にしている人がどれだけ存在するだろうか。

 しかし、ここにもかつて大きなデジタイゼーション戦争が存在し、コンテンツを消費する側と権利を守る側の仁義なき戦いが長く続いたのである。

 この戦いは言い換えれば、”覚醒された”デジタル人類と業界の都合の戦いであった。結果は言うまでもなく、コンテンツを好きなスタイルで消費できる”まっとうなサービス”が次々に登場し、デジタル人類が勝利を手にしたのである。

 最近のDisney社のコンテンツはBDとDVD、ダウンロードコンテンツの三位一体型が多く、コンテンツ消費者のことを良く研究した優良な商品である。

 他にも色んな小競り合いがある。ガラケー・スマホ戦争、メール・LINE戦争、履歴書は手書き戦争――など大小さまざまだが、一つだけ共通点がある。それは、必ず「変革側」が最終的に勝利することである。

 これらの戦いは、変革後の価値に気づいた”覚醒サイド”と、変革が理解できない・変革されたら困る人たちによる”既得権益サイド”の戦いと言い換えることができる。

 人間は一度変革を実感して覚醒すると二度と元に戻れない習性があるのか、時間によってどんどん増える”覚醒サイド”の膨張を止めることができないのである。

 筆者はこれを「デジタイゼーションの不可逆性(図2)」と名付けるが、この性質により長期的にははっきりと勝者が読み取れるのである。


デジタイゼーションの不可逆性(図2)

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