ローソン 執行役員オープンイノベーションセンターセンター長 経営戦略本部副本部長 白石卓也氏
「POS(販売時点)データや会員データだけでは、何が売れたかが分かるだけ。これまで収集していなかったデータを活用して、個々の顧客の実態が分かるようになる。何が必要な情報なのかを考えることが大切だ」――。
東京ビッグサイトで開催された 「2017 Japan IT Week ビッグデータ活用展 春」の5月11日の特別講演では、コンビニエンスストア大手のローソンの執行役員 オープンイノベーションセンター長 経営戦略本部副本部長を務める白石卓也氏が登壇した。「ローソンが次世代コンビニで取り組むデータ活用戦略」と題した講演でビッグデータの活用事例を紹介した。
白石氏は「コンビニは変化対応業。アンテナを張って世間の変化に合わせて変わっていくことが必要」と、データ分析の重要性を説く。1つの店舗には約3000種の商品が置かれ、このうち何十種もの商品を毎週入れ替えて、世間の変化に対応している。
顧客のニーズは多様化しているため、さまざまな人に受け入れられる店舗作りが必要になる。例えば、「こだわり派」(自分だけのオリジナル)、「効率派」(レジレス、自動決済)、「エンジョイ派」(新商品、新サービス)、「触れ合い派」(対面、コミュニティー)などに分かれており、さらに同一人物であっても、時と場合によってスタンスが変わる。
講演のまとめとして白石氏は、データ分析において大切だという7つのポイントを挙げた。
- やみくもにデータを集めるのではなく、何が必要な情報なのかを考えること
- 想像のデータ分析をやめて、実態把握の世界へ移行すること
- 顧客を理解し、顧客との信頼関係をどう築くかを考えること
- データは生ものであり、いつまでも有効ではないと知ること
- データから何を見つけ、どう生かすかに知恵を絞ること
- データは抱え込まずにオープンにし、連携・共有すること
- データサイエンティストを育てること
POSデータからは顧客の実態は見えてこない
同社の基本戦略は、製造から販売までのサプライチェーン全体を可視化して、効率化を測ることにある。これにより、例えば、廃棄ロスなどを減らすことができるようになる。
ところが白石氏は、「従来の見える化は、想像の見える化だった」と指摘。実態として、POSデータや会員データを活用するだけにとどまっていた。この方法では、顧客がおにぎりを購入したという事実や、ヘルシーメニューを購入したという事実しか分からない。
「もしかしたら、『サンドイッチを買いたい』と思ったが、在庫が無く、代わりに同じ具材のおにぎりを仕方なく買ったのかもしれない。それとも、たまたま二日酔いだったのでヘルシーメニューを買ったが、いつもはガッツリ系なのかも知れない」(白石氏)
白石氏は、「想像の見える化から、実態の見える化への転換が必要だった」と振り返る。個々の顧客の実態を把握できるようにするため、映像データやセンサのログ、SNS上の雑談データなどを活用する必要があった。