もう1つ、アーリーアダプターの事例では、日本交通の子会社のジャパンタクシーです。最近東京都内でタクシーに乗ると後部座席にタブレットがあるケースがありますが、それにソラコムを使っていただいています。乗車した客層を分析して、より適切な道路広告を出そうという取り組みです。
現状では、性別しか見ていないそうなのですが、あそこの広告枠を売るというビジネスを始められています。この場合は、ジャパンタクシーさんの下にIRIS(アイリス)さんっていう会社を作られてやられており、IoTという名前もついていないので、ビジネスとして回しているのかなという認識です。そういう意味で言うと、アーリーアダプターはもう動いていて、ビジネスを作り始めていると感じています。
業界ごとに異なるIoTの現状
武下氏:弊社はインキュベーションビジネスなので、小売りやサービス業の会社が儲からないと、儲からない構造です。その小売りやサービス業では、「IoT領域を使ったから儲かった」という例はなかなかありません。売り上げのポートフォリオ的にはまだまだ小さいところなので、これからだと思っています。顧客を見ていると、サービスの幅は広がっています。

エスキュービズム 取締役 武下真典氏
コンシューマーを相手にする企業が多いのですが、コンシューマーは、デジタル化したことで“わがまま”になっており、なかなかお金を払ってくれないという面があります。
それに対して、どうやって細分化してお金を払わせるかが課題です。顧客満足度を上げるといったことを試行錯誤してきて、儲かる種が見えたらそこに投資して儲けていくという形が見え始めたと思っています。ビジネスになっている分野としては、コストダウンや効率化があるのですが、まだまだマネタイズは足りません。
IoTをやる時に、モノにセンサを付けることは、コスト高になってしまうため、小売りはすごく嫌っています。儲かることが分かった時にも仕組みを作るのが難しくて、通信だとソラコムさんを使っておけばいいよねという部分があったのですが、マネタイズのところの支払いをどうやるかが、まだ解決されていません。
われわれが対峙している小売りやサービス業では、まだ「儲かるか」の解がないのです。見つかったら爆発するけど、見つからなかったら「うーん」という感じで、モノのマネタイズに特化したプラットフォーマーは来てもいいかなという気がしています。
ZDNet:エスキュービズムはシェアリングエコノミー課金管理システムなど、プラットフォームビジネスを展開されていますが、そこで儲けるのはまだこれからですか。
武下氏:投資が必要というのと、クレジットカードや銀行とのつながりがあり、いろいろな法律も絡むので、決済はマネタイズが難しいのです。例えばモノを遊休ビジネスとして展開する際、1時間500円のビジネスをしようと思ったとしても、VISAやマスターカードと一緒にやるのか、どこかの銀行とやるのかが難しい。決済プラットフォーマーがやってくれた方がいいかなというのは思っていて、そういう話は決済会社とよくしています。