データおよびアナリティクス分野では数多くの買収が実施されてきている。筆者は2015年と2016年にも記事を執筆している。
InforによるBirstの買収発表を機に、他の買収についても考察しておく価値があるだろう。
上述の記事では買収をいくつかのグループに分類して考察した。以下でも同様のやり方で考察したい。
アナリティクスに対するアナリティクス
データ指向ソフトウェア企業が他のデータ指向ソフトウェア企業を買収する場合から考察したい。まず、SyncsortによるTrillium Softwareの買収からだ。データプレパレーションとデータクレンジングに注力するTrilliumと、Syncsortとの相性は抜群だ。なぜだろうか?いわゆる「ダーティデータ」が大量に生み出されるところがあるとすれば、それはメインフレームだ。そして、Syncsortがビッグデータへの取り組みで注力しているプラットフォームこそがメインフレームなのだ。Syncsortは同社のスタックに存在するギャップを見出したがゆえに、そのギャップを埋めるための買収を実施したというわけだ。
Qlik Technologiesも同様の道を歩んでいる。Qlikは、同社のプラットフォームがもともと有していた地図指向のアナリティクスをよりパワフルにするという目的で、ジオアナリティクスおよび地理情報システム(GIS)のプロバイダーであるIdevioを買収した。なお、Idevioの製品は買収以前からQlikのアドインとしてパッケージ化されている。このため、両者はお互いの求めているものやニーズが一致しただけでなく、技術的にも相性が良かったというわけだ。
自社にないものを取得する例として次に、Clouderaが2016年に実施したSense.ioの買収を見てみよう。データ科学を活用したSense.ioのコラボレーションツールは、Clouderaが「Hadoop」のバニラディストリビューションを展開するビジネスから一歩踏み出した戦略を推進するうえでうってつけとなる。
Clouderaが「Cloudera Data Science Workbench」のコンポーネントとして統合したSense.ioの製品は、「Hue」や「Cloudrera Manager」と親和性が高く、「Cloudera Navigator」とは特にうまく連携できる。これらのコンポーネントは、単なる管理コンソールだけでなく、ツールにまでおよび、Hadoopや「Apache Spark」をより一層便利かつ生産的にするため、データ科学者もメリットを享受できるようになる。
サービス、プリーズ
全行程を一括で請け負う際における究極の支援は、コンサルタント自らがサービスを提供するというものだ。すべての顧客がこのようなサービスを望んでいるわけではないが、それを望む顧客にとって優れたコンサルティング組織は重要となる。Teradataはこの点に着目し、2014年にThink Big Analyticsを買収した。また同社は2016年の夏にも、英国に拠点を置くビッグデータサービス企業Big Data Partnershipを買収し、Think Bigに組み入れた。この際も、同じ目的を持っていたのだろう。
筆者が挙げているのは、1つのカテゴリから抜き出したたった1つの事例でしかないのは分かっている。しかし、IBMやHewlett Packard Enterprise(HPE)といった世界規模で展開するシステムインテグレーター(SI)や、Accentureのようなプロフェッショナルサービスを展開する大手企業を考えてみてほしい。ビッグデータと予測分析、AIはこういったそれぞれの企業に大きな機会を与えている。サービスとアナリティクスは手に手を取って進んでいくことになる。買収と提携がそれを促進するのだ。