(アナリティクスを)クラウド上で実現する
次の、そして最も実りの多いグループはクラウドベースのアナリティクスサービスだ。ここに分類される買収事例を3つ挙げたい。まずは、SAPによるAltiscaleの買収だ。AltiscaleはサービスとしてのHadoopを手がけている。SAPはAltiscaleがクラウドにおけるHadoop関連の力をもたらすとともに、「SAP HANA」にもメリットをもたらすことを見出した。この点は誰も否定できないだろう。
次にGoogleが3月に買収した、データ科学のコミュニティーであり、コンペティションプラットフォームでもあるKaggleを挙げることができる。KaggleはGoogleのクラウドプラットフォームに統合されつつあり、Googleはコミュニティーからの信頼を得るとともに、同社のクラウドデータとAIプラットフォームが約束するものを調達するための専門性を獲得している。
Amazon Web Services(AWS)もharvest.aiの買収で同様の選択をしている。その目的とは、顧客のために同社のクラウドプラットフォーム全般に対してセキュリティと脅威保護を追加するというものだ。アナリティクス自体は関係しないが、harvest.aiは脅威検出の目的でAI技術を利用しているため、AWSはAIの恩恵をより直接的に得るための知的財産と人材を獲得したということになる。
アナリティクスおよびAIを手がける企業を買収してきているMicrosoft(筆者はこれらの買収についても過去の記事で採り上げている)もAWSに出し抜かれまいとしてか1月、カナダのモントリオールに拠点を置くMaluubaを買収した。Maluubaは自然言語処理や機械による読み書き、より汎用的なAIに注力している。Microsoftは明確に述べていないものの、Maluubaの技術と人材は「Microsoft Azure」クラウドプラットフォームに展開されるはずだ。また、そういった技術や人材が「Cortana Intelligence」に統合されないというのは考えづらい。
今後も続く企業買収
BIやビッグデータを手がけるソフトウェア企業が自社製品を改良しようとしているのか、アナリティクスプラットフォーム企業が自らのサービス組織を増強しようとしているのか、企業向けのアプリケーションプロバイダーが自社製品にアナリティクス機能を組み込もうとしているのか、大手パブリッククラウドプロバイダー各社が自社のAI能力を強化しようとしているのかにかかわらず、アナリティクス関連企業の買収は花盛りだ。
AI分野において特に言えることだが、数多くの小規模アナリティクス企業が事業運営を続け、数多くの新興企業が資金を調達しているなか、さらに多くの買収が実施されると見てよいだろう。大手企業は、こういったデータ関連の新興企業すべてを農作物と捉え、収穫して自らの糧にしようと虎視眈々(たんたん)と狙っているようにも見える。現在のところイノベーションの食物連鎖が存在しているようであり、その食欲が減少する気配は感じられない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。