玉川氏:答えは明らかで、IoTスケールに耐えうるようなツールを選ばなければなりません。それには、Amazon Web Services(AWS)が切り開いたような、オープンでエアで従量課金なサービスモデルしかないと思います。そういうサービスモデルで提供されているツールを選ぶのが大切ですし、われわれがソラコムを提供するときも同様です。
基本的には、マネージドでスケーラブルなツールが提供されているものを選び、自分たちのコアコンピタンス(企業の中核となる強み)は自分で作るという分け方をしますね。また、ツール選定のときに、そのツール自体が伸びているかもすごく重要だと感じています。伸びているサービスでないと、長く使えず、なくなってしまう可能性もあります。
八子氏:クラウドも基幹システムもそうですが、既存のシステムは中央集約型です。基幹システムなどが会社のデータセンターや情シスの部屋にあって、扱う端末の台数の上限は社員数で、データはものすごく標準化されている。
ところがIoTは、玉川さんがまさに話したように、台数がめちゃくちゃ多い。そして、デバイスがいろいろなところに置かれるので、分散化します。現場で毎秒ロギングしてほしいと顧客によく言われますが、毎秒でロギングするとIoTゲートウェイがうまく働かなくてデータの欠損が生まれたり、高温多湿の現場にゲートウェイやセンサが置かれたため動かなくなり、データが上がらなくなったりもします。

ソラコム 代表取締役社長 玉川憲氏
システムの設計思想が全く違う。IoTの肝は、基本的にはクラウドに集中させるとともに、エッジ側に分散したシステムをどれだけうまくクラウドと協調させながら動かすのかということに尽きます。
エッジ側のデバイスがインテリジェント化するとエッジ側にも分散せざるを得ない面があるのが1つ、さきほど話した通りシステムの作り方が違うので、エッジ側に分散させなければならないというのが2つ目。
3つ目は、シンプルに小さく早く作っていける、モノリシック(一枚板)なアーキテクチャで全部塗り固めてしまうものでは「ない」ものが要求されるということです。ある局面においては分散化のシステム、ある局面ではもっとモジュール化し、クラウド化された、疎結合というようなシステムになっていると思います。
突き詰めていくと統合基幹業務システム(ERP)など、柔軟に変更ができないシステムは、ほぼ末期を迎えていると思うのです。例えばシステム開発のプロセスでは、一度要件のFIXをしたら、次のシステムの公開まで半年間は少なくとも要件はFIXしたままというのは、事業のスピードについていけないので、完全にアウトだと思います。
システムの在り方自体が単一のアーキテクチャである必要もありません。松島さんのコメントのように、ローカルでもっと柔軟に作っていけるものがたくさんあるのであれば、それをどんどん作っていく。ただし、最終的にはKPIや理想像が必要です。
ウフル 八子氏提供
IoTとビッグデータのあるべき関係とは
松島氏:ビッグデータを握る者が次の時代を握ることは間違いないと思います。そうすると日本の市場では独り占めは許されないので、私は協調領域と競争領域に分けて、協調領域はオープンにしましょうと言っています。
データに関しては、しっかり仕切らなければならないでしょう。ハードに関して言えば、もうワープロを使っている人はいないわけで、専用機から汎用機の時代にどんどん移行しているわけですよね。
それをIoTのデバイスとして、通信とデータ層、アルゴリズム層、最後にAI層と、きっちりハンドルしていくこと。その時のハードウェアは汎用機にして、新しいものが出たら水平協働でつなげていくといったことをやる必要があると思っています。