--各サービスドメインにくわしくなると、分析に必要な客観性を保つのが難しいことがあると思います。このバランスについてはいかがでしょうか。
友部氏:はい。たしかに客観性は必要だと思いますね。当社のアナリストの場合、まず配属されたタイトルにコミットするように教育しています。当社は非常にスピード感がありますので、だいたい6カ月から1年くらいすると別のタイトルへ移ったり、俯瞰した分析をしたい場合などはマーケティングチームに移って分析をしたりと他のキャリアパスへ移るケースもあります。このような異動に伴って、客観性のバランスは担保されています。
--一方で長期的な課題を分析するという視点ではいかがでしょうか。
友部氏:組織として、過去にさまざまなタイトルをリリースし改善してきているため、ノウハウの蓄積があります。そのため、新しいタイトルを短期的に分析し、改善していく中でもある程度のパターンはわかるのです。それぞれ必要な分析を適用していくようなイメージです。またゲームの質やジャンルによって必要な分析があるので、ノウハウを移転することによって知見を共有しています。
--先ほど組織として分析への理解度が高いというお話がありましたが、もう少し具体的に教えていただけますか。
半田氏:どのように分析業務が根付いて行ったか、時系列で話します。
もともと、リレーショナルデータベースでサービスに特化したデータマートを構築していたり、Excelを駆使したデータ分析は行われていました。ただ、かなり属人化していたり、プランナーが片手間にやったり、単純な集計にも酷く時間がかかったり......という課題があったようです。
私が入社したのは、ちょうど共通の分析基盤としてHadoopクラスタを構築していた過渡期でした。基盤構築と並行して、分析を専任で担うアナリスト組織が設けられ、ノウハウが集約されていきました。
その後分析基盤グループは、よりアナリストの生産性を高めるために共通データの整備やツールを改善していました。アナリストはサービスの改善に踏み込むために、それぞれ各サービスに散って意思決定に直接参加するようになっていき、データドリブンな意思決定やPDCAサイクルを広めることとなりました。
共通基盤による仕組み化と生産性の改善、専任アナリスト職による分析業務の確立、各プロジェクトへの直接参加によって社内へ広がる、という流れです。
3年ほど前にArgusといういわゆるBIツールを内製したのですが、あっという間に広がって、1日の利用ユニークユーザーが800人、1ヶ月の利用ユニークユーザーが1000人と、「多くの」従業員が「活発に」閲覧しています。(連結子会社も含めた従業員数は2400人)。ダッシュボードやレポートを自分で作成している人数は100人くらいです。今では各メンバーが事業のKGIや施策評価のKPI、アドホックな分析レポートなどを業務の中で当たり前のように閲覧している状況になりました。
データを活用することが広く浸透した今、「何をどのように見て判断するのか」「分析自体を目的とした数字遊びになっていないか」などアナリストの役割はより重くなっているとも言えます。
友部氏:プロダクトやサービスを作るのは数字ではなくどういう体験をユーザーに届けたいかという「Will」だと思いますので、そのWillをもった人間の背中を押したり、落とし穴を埋めるためにこれらを使っています。新規事業の立ち上げの場合はデータはありませんが、リーダーが色々と判断するために必要なマクロ調査や市場調査、ユーザーインタビューなどを実施し、総合的な分析を提供しています。