米IBMは2016年10月27日、ディザスタリカバリ(DR)ソフトウェアを提供するインド企業、Sanovi Technologiesを買収することで合意したと発表した。IaaSの旧Softlayerを「Bluemix Infrastructure」として統合し、IBMのクラウドサービス全体を示すブランドとして「IBM Bluemix」を打ち出した。
米IBMのレジリエンシサービス担当ゼネラルマネージャー、Laurence Guihard-Joly氏
クラウドだけでなく、既存のオンプレミスシステムを含めたハイブリッドな環境を構築することを意図する。だが、インターネットを前提にした常時稼働が求められる環境を安定的に提供するためには、さまざまな要件が発生する。IBMがSanoviを買収した背景には、そのあたりでサービス品質を担保することが狙いとしてあるようだ。
来日した、米IBMのレジリエンシサービス担当ゼネラルマネージャー、Laurence Guihard-Joly(ロレンス・ギアール・ジョリー)氏と、Sanoviの創業者で最高経営責任者(CEO)を務めていたバイスプレジデントのChandra Pulamarasetti氏に聞いた。
夜中の3時にベッドの中から注文できてしまうインターネットでの買い物を考えると分かる通り、「今日のシステム環境は止まることが許されない」とJoly氏。中国のブラックフライデーや爆買いといったイベントもあり、そこでシステム障害を起こしてしまうことによるブランドイメージの悪化や風評被害なども、「1つの災害対策だ」とJoly氏は説明する。
実際に、最近の典型的なシステム環境では、自社運用しているオンプレミスや第三者データセンター上のプライベートクラウド、パブリッククラウドなど異種混合の環境でさまざまなワークロードが発生している。「それを管理、保護、保証するのが非常に難しくなっている」とJoly氏。
複雑化する企業のシステム環境
複雑なIT環境、柔軟性不足、可視化できていないこと、手作業によるオペレーションミスといった要因を抱えながら、一瞬の停止も受け入れられないという相反する要件を満たさなくてはならない。
Sanoviの創業者で最高経営責任者(CEO)を務めていたバイスプレジデントのChandra Pulamarasetti氏
買収したSanoviは、複雑なシステム環境をソフトウェア定義により管理し、ワークフローを整え、災害復旧の監視や管理を実践、DRのライフサイクルを自動化することにより、企業の事業継続を支援する。
Sanoviの「Application Defined Continuity」(ADC)は、物理インフラ、仮想インフラ、クラウドインフラのワークロードを統合的に管理するもの。マルチクラウドやマイクロサービスなど、企業の新ビジネスに直結するようなテクノロジが次々と登場する一方で、乱立による管理の問題が指摘される。技術的な革新を続け、ビジネス推進速度を上げるための基盤として機能することを想定している。
典型例として、システムテストのしやすさをPulamarasetti氏は挙げる。止められないことを前提にしながら、複雑な環境に対して効果的にテストを実施していくことのハードルは高い。ADCを活用することで、異種システム間にまたがる計画、計画外のシステム試験を柔軟に実施できるようにする。ある顧客は、年間150回以上の災害復旧テストを実施しており、それが法令順守や監査書類の即時提出につながっているという。事業継続性向上への寄与を強調する。
SanoviのユーザーはHDFC銀行など世界に350以上あり、インドのWiproやTata、AWSなどがパートナーとなっている。
買収完了後、SanoviのテクノロジはIBMのグローバルテクノロジサービス事業部に統合し、「IBM Resiliency Services」部門を強化することになる。