汎用量子コンピュータ用の新CPUを構築--商用システム「IBM Q」の能力を倍増

ZDNet Japan Staff 2017年06月10日 07時00分

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 米IBMは米国時間の5月19日、量子演算回路(量子ゲート)を組んで、並列計算を実行する「汎用量子コンピューティング・プロセッサ(CPU)」を構築し、最新の処理能力を向上させる2つのテストに成功したと発表した。

 1つは、アップグレードされたプロセッサで、開発者や研究者、プログラマーが実際の量子プロセッサを活用して量子コンピューティングを探求できるよう、IBMクラウドを通じて無料で使用できるという。

 さらに、商用プロセッサの新しいプロトタイプの開発に成功。最初のIBM早期アクセス版商用システムの中核と説明している。

 IBMは、3月に「Q」を発表。ビジネスやサイエンスで応用可能な汎用量子コンピューティングシステムを構築する業界初の取り組みと説明していた。

 IBM QのシステムとサービスはIBMクラウドプラットフォームを通じて提供される。2016年に初めて量子プロセッサへのアクセスを一般に公開し、科学研究向けの支援ツール、大学の講義用リソース 、量子コンピュータへの興味を喚起する仕組みを提供している。これまでに、ユーザーは量子プロセッサを利用して30万件を超える実験をIBMクラウド上で実施してきたという。

 IBMが開発した2つの新しいプロセッサは、以下のとおり。

16量子ビット・プロセッサ これまでの5量子ビット・プロセッサよりも複雑な実験が可能になる。ベータ版へはIBM Quantum Experienceを通じて要望に応じてアクセスでき、新しいソフトウェア開発キットはGitHub(US)上で利用できるとした。

17量子ビットを搭載するIBMの最初の商用プロセッサのプロトタイプ 材料、デバイス、アーキテクチャに著しい性能向上があり、IBMがこれまでに開発した中で最も処理能力の高い量子プロセッサという。現在IBMクラウドで利用可能なプロセッサの少なくとも2倍は処理能力が高くなるよう設計されており、最初のIBM Q早期アクセス版商用システムの基盤という。

 IBM ResearchのディレクターであるArvind Krishna氏は「発表した性能向上により、IBMが将来のプロセッサを拡張して50個以上の量子ビットを搭載し、従来型コンピュータより高いコンピューティング能力を実証できる」と説明。IBMクラウドを通じて利用可能な量子システムのこれらの強力なアップグレードにより、従来のコンピュータだけではほぼ実現不可能な領域を思い描けるようになるとした。

 現実的な問題を解決する量子プロセッサ固有のコンピューティング能力は、量子ビットの数だけではなく、さまざまな要素によって左右されるという。量子情報は壊れやすい性質を持っているため、コンピューティング能力を向上させるには、量子ビットの品質向上、量子ビット同士がやりとりする仕組み、発生する可能性のある量子エラーを最小限に抑えることも必要になると説明している。

 このため、IBMは、量子システムのコンピューティング能力の特徴を示す新しい指標「量子体積」を採用している。量子体積には、量子ビットの数と品質、回路の接続性、演算の誤り率が含まれる。IBMの商用プロセッサのプロトタイプは、量子体積を大幅に向上させるとアピールした

 IBMは、今後数年にわたり、このテクノロジの開発を積極的に推進し続けるとともに、プロセッサのあらゆる要素を改善して、将来のシステムにおける「量子体積」の大幅な向上を目指す。これには、50個以上の量子ビットを搭載するという。

 従来型コンピュータで現在実行されているWatsonなどのテクノロジは、大量の既存のデータに埋もれたパターンや洞察を明らかにするうえで役立つ。一方、量子コンピュータは、データ量が不十分なためにパターンを検出できない場合や、答えにたどり着くまでに検討すべき可能性が多すぎて従来型コンピュータでは処理できない場合に有用とした。

 IBMは量子コンピューティングの将来の応用例として、サプライチェーン、物流、金融データのモデル化、リスク分析など、どんな組み合わせが最適かを計算する「組み合わせ最適化問題」に対する施策を挙げている。

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