ジョブズとダヴィンチの共通点--「30年前のiPhone」を生んだアートとロジック - (page 2)

増村岳史

2017-06-03 07:00

アートの力を使ってデータを可視化するデータビジュアライゼーション

 アートとテクノロジの融合させるという発想は天才のみに与えられた特権ではない。例えば、さまざまな資料に接する機会がある、日々の会議やミーティングの場でもこの発想は生かすことができる。

 人間が一度に認知できる限界はせいぜいシート数枚程度だろうが、統計が重要視される現在、限界を超えた膨大なデータから答えや予測を導き出さなければならない時が来るかもしれない。

 データの解析ソフトや、機械学習などのAIも有用だが、人にとって代わり重要なプロジェクトの決断や決裁まで委ねることはできない。あくまでヒトが最終的に物事を決めるのである。

 人間の脳が把握できない膨大なデータ量をビジュアルに落としこみ、データを可視化しさまざまな気づきをもたらすデータビジュアリゼーションが昨今、注目を集めている。

データビジュアリゼーションの構築にはデッサン力が帰依した

 このデータビジュアリゼーションの開発チームの主要メンバーであり東京藝大でアートを学んだ櫻井稔氏に話を聴いた。

 櫻井氏は、物事を観て理解するプロセスはデッサンを描き上げてゆくプロセスと同じであると語る。


 デッサンをする際に最も重要な事は絵を描く対象を見る際に“俯瞰(ふかん)”と“主観”を繰り返すことであるそうなのだ。

 デッサンを描いてゆくプロセスは、まずは対象を俯瞰して全体像をつかみ、大まかなフォルムをとらえることから始まる。

 大まかなフォルムをとらえられたら徐々に細部を詰めていくのであるが、初心者は得てして、細部のみに目が行ってしまいがちなのである。細部のみに目が行ってしまうと、全体のバランスが崩れてデッサンを描き上げることができない。

 デッサンを描き上げるためには俯瞰と主観、つまり全体を捉えることと細部を詰めていくことを交互に繰り返していくのだ。

 この俯瞰と主観のスキルがデータビジュアリゼーションを生むにあたって大きく寄与したのである。

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