産学連携で2014年から共同開発が進められてきた「津波浸水・被害推計システム」が完成し、内閣府の「総合防災情報システム」に採用されることになった。地震発生から30分以内に津波による浸水被害を推計でき、こうしたシステムは世界初だという。
同システムは、東北大学の災害科学国際研究所を中心に、大阪大学やNEC、国際航業、エイツーらが共同開発し、津波による浸水被害(浸水建物の棟数など)の推計と情報提供までを行う。
地震発生時に東北大とエイツーから提供される断層推定データを使って、災害科学国際研究所と国際航業が高速計算用に改良した「津波浸水・被害推計シミュレーションプログラム」を、東北大と阪大にあるNEC製のスーパーコンピュータシステム「SX-ACE」で実行する。仙台市と大阪市の2カ所で同一システムを稼働させることにより、24時間の無停止運用を可能にした。
津波浸水・被害推計システムにおける処理の流れ(広帯域ネットワーク利用に関するワークショップ「ADVNET2016」での公開資料より引用)
東北大などによれば、同システムは南海トラフ地震を想定した場合に、地震発生から30分以内に静岡県から鹿児島県までの沿岸域の約6000キロを対象として、30メートル四方のレベルで津波被害を推計できるという。従来はこうした推測の処理に数日を要していた。
内閣府は今回のシステムを2017年度後半から本格運用することにしている。