IDC Japanは5月24日、国内エンタープライズアプリケーション(EA=Enterprise Applications)ソフトウェア市場に関する予測を発表した。同市場の2016~2021年の年平均成長率は4.0%で、2021年の市場規模を5993億8100万円と予測する一方、成長率は2019年頃から下降に転じ、データ活用向けの機能やミドルウェア領域が成長をけん引するという。
国内EAソフトウェア市場 売上額予測、2016年~2021年
人事給与システムを例にした、ベンダー製品の機能拡張
IDCが同市場で対象とするのは、「Enterprise Resource Management」(ERM)、「Supply Chain Management」(SCM)、製造管理とエンジニアリングツールの「Product Lifecycle Management」(PLM)の製品。
成長率の下降要因には、投資が海外拠点向けにシフトすることや、次回の税制改正対応需要の反動を挙げている。また、モバイルワークや在宅勤務と親和性の高いクラウド需要がさらに拡大し、ライセンス販売がサブスクリプション型へ移行することも、成長ペースを緩める要因になるという。
IDCでは、今後基幹系ソフトウェア自体がバックエンドの管理システムから、データ活用に向け機能拡張が進むとみる。対話型インターフェイスなどコラボレーション機能の追加や、業務プロセスを自動化するミドルウェア領域との融合が進み、EAソフトウェアの市場定義の枠を超えた部分で大きく成長するという。
2016年の同市場は成長率が2.3%、市場規模が4916億7200万円だった。大企業向けERPの刷新が続き、前年比4.2%増と好調なERMソフトウェアが市場成長を牽引した。
SCMソフトウェアは、フロントエンドシステムへの投資に押され2.7%の成長。またEAソフトウェアの過半数を占めるPLMソフトウェアでは、定額制のサブスクリプション販売の影響が顕在化し、成長率が0.8%で前年並みとなっている。
また同市場のおけるクラウドの利用については、オンプレミスシステムの機能補完から、コアシステムへのSaaSの採用が拡大し、2015年以降に普及したIaaSとともに、データ活用に向けたPaaS需要などが本格化の兆しをみせているという。
さらに働き方改革との関連で、EAソフトウェアにもデータ保管と可視化機能を超え、データから洞察を得るための拡張性が求められている。IDCはこれらを踏まえ、機械学習機能などをクラウドで活用するインテリジェントERPが、働き方改革の中心的な役割を担っていくとしている。