Gartner リサーチ部門バイスプレジデント兼ガートナーフェロー Jamie Popkin氏
「最高データ責任者」(CDO=Chief Data Officer)は、データ主導型ビジネスのために登場した新たなリーダーだ。Gartnerの予測では、「2020年までに大企業の80%がCDOオフィスの設置を完了する」としている。日本は遅れているものの、他の地域ではアジアも含めてCDOを設置するという潮流がある。
「ガートナー データ&アナリティクス サミット2017」のセッションの1つとして、Gartnerのリサーチ部門バイスプレジデント兼ガートナーフェローを務めるJamie Popkin氏が登壇。「最高データ責任者になるためのキャリア・パス」と題して講演した。
講演の論点は3つ。(1)CDOの業務範囲と責任、(2)CDOの経歴と経験、(3)CDOとしての成功を収めるために必要なスキルと資質――だ。ユーザー企業へのアンケート調査をもとにした2016年のCDOサーベイの結果をベースに、CDOのキャリアの実態を解説した。
最も重要な役割は「データ品質の管理」
CDOサーベイでCDOの業務範囲と責任について聞いたところ、回答者が挙げた最も重要な役割の1位は「データの品質」の管理で、79%を占めた。2位以下は「情報戦略」(72%)、「マスタ・データ管理」(72%)、「情報ガバナンス」(66%)、「データ・サイエンス」(66%)、「ビジネス・アナリティクス」(65%)と続く。
特に、「IT部門と事業部門にまたがった視点でデータの品質を管理することが求められる」とPopkin氏は指摘する。データの品質に問題が発生した際には、データを運用する業務側と、データを支えるテクノロジ側の双方で何が起きているのかを把握する役割が求められる。
Popkin氏は、自身の経験から、運転免許証のデータの反映が遅延しているサービスの例を紹介した。ニュージャージー州からミネソタ州へ引っ越し、同州の免許証に切り替えたが、レンタカーに乗る時に新しい免許証を見せたら。使えなかったという。ところが、無効になった古い免許証を見せたら乗ることができたそうだ。
CDOの目的について調査すると、経営の目的とほぼ一緒であり、企業の目標をそのままCDOが担っている。第一の目標に挙げられたものの1位は「顧客との親密性の向上」(62%)、2位が「競争優位性の強化」(60%)、3位が「効率化」(54%)だ。
CDOの目的が経営の目的と一致しているため、Gartnerの予測では「2020年までに、成功を収めたCDOの15%が、最高経営責任者(CEO)や最高執行責任者(COO)、最高マーケティング責任者(CMO)など他のエグゼクティブに昇格する」(Popkin氏)としている。