編集部からのお知らせ
解説集:台頭するロボット市場のいま
解説集:データ活用で考えるデータの選び方
日本株展望

米経済を弱体化させるトランプ政策--5つの誤り

ZDNet Japan Staff

2017-05-30 10:59

今日のポイント

  1. トランプ大統領は米経済を強くする政策を実施すると言う。ところが、中身を吟味すると、短期的な景気押し上げ効果のみで、長期的には米経済を弱体化する政策が多い
  2. 景気・企業業績改善が続き日経平均の下値は堅くなってきたが、トランプ不安が続き、上値を抑えている

 これら2点について、楽天証券経済研究所長兼チーフストラテジストの窪田真之氏の見解を紹介する。

トランプ政策、5つの大間違い

 トランプ大統領は、短期的に米景気を強くすることしか考えていないようだ。短期的に景気を拡大するものの、長い目で見ると、米経済を弱体化させる政策ばかりが目立つ。以下、5つの問題点を挙げる。

(1)景気回復期に大規模景気刺激策

 トランプ大統領は、大型減税や公共投資の増額によって、米経済の成長率を一段と高める方針である。大統領選のキャッチフレーズは「Make America Great Again(米国を再び偉大にする)」だった。米経済の往年の栄光を取り戻すという趣旨だ。現状に不満を持つ米国の低所得者層に響く言葉だった。

 ただ、現実には米経済は既にGreat(偉大)であり、ここからさらに景気刺激策を取ると、景気過熱を招きかねない。米経済は、シェール革命によって、かつてない繁栄を謳歌しているところである。世界一の原油輸入・消費国だった米国で、突然、安価なシェール・ガス・オイルが大量に産出するようになった効果は莫大だ。

 トランプ大統領がまだ何もしないうちに、米景気は回復色を強めている。にもかかわらず、トランプ大統領はここから大規模な景気刺激策を発動する方針である。

 大規模景気刺激策には副作用が多いので、深刻な景気悪化局面以外は回避すべきだ。大統領の人気取りのために大規模公共投資をやれば、後に、経済効率の悪化と財政赤字の拡大を生じる。さらに、大規模な「財政のガケ」が米景気を悪化させる問題もある。

 大規模公共投資は、始める時は景気を上向かせて歓迎されるが、後に反動で景気を下押する。それは、日本や中国が経験してきたことである。たとえば、10兆円の公共投資をやれば、その年の景気にはプラスに働くが、次年度以降にはマイナス効果が及ぶ。毎年10兆円の公共投資をやり続けることはできず、公共投資額を減らさざるを得なくなるからだ。

 オバマ前大統領も、就任直後は公共投資を増やして米国民に喜ばれた。ところが、後に財政のガケが景気に悪影響を及ぼす時には、米国民から嫌われた。オバマ前大統領の選挙戦でのキャッチフレーズは、「Change-Yes We Can(我々は変わることができる、そう、できる)」だった。現状に不満を持つ層の心に刺さる言葉だった。ところが、公共投資を増やすことでは、問題の根本的解決にはならなかった。

 中国は、リーマンショック後の2009年に、4兆元(約65兆円)の公共投資を実施した。それで、中国景気は急回復し、世界的な景気回復を牽引した。この時は、中国の4兆元投資が世界経済を救ったと言われた。

 ただし、中国は、この時に膨らんだ非効率な投資の整理と、財政のガケに、その後長く苦しむことになった。4兆元の投資をやって良かったといえたのは、当初1年だけだった。

 トランプ大統領が公共投資の大判ぶるまいをすれば、後に禍根を残すことになるだろう。ただ、トランプ大統領が目指す法人減税には、米国企業を強くし、米国に投資を呼び込む効果もある。財政悪化の問題を除けば、法人減税自体は、米経済を強くする政策と言える。

 問題は、法人減税の財源だ。以下に示す通り、トランプ政権は、弱者切捨てで財源を確保し、法人減税を実施しようとしている。それが、米国の社会不安を高めるリスクがある。

(2)露骨な弱者切り捨て政策

 トランプ政権が議会に提出した予算教書で、トランプ政権の本質が明らかになった。予算教書は、低所得者への補助金を大幅カットすると同時に、大型減税や公共投資を実施するという内容だった。弱者を切り捨てて、大企業を優遇する冷徹な資本主義政策である。

 米経済は歴史的な繁栄期を迎えているが、貧富の格差拡大により、社会不安が高まっているのは事実だ。米経済繁栄の恩恵を受けられない低所得者層の拡大により、社会的な分断が深まっている。トランプ大統領は、低所得者層の不満の受け皿となることで、大統領選に勝利した。

 ところが、大統領になってからは、露骨な弱者切捨て策を連発している。こうした行動は、トランプ大統領を支持した低所得者層の反発を招き、米国社会の分断を一段と深める可能性がある。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

Special PR

特集

CIO

セキュリティ

スペシャル

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. クラウドコンピューティング

    AI導入に立ちはだかる「データ」「複雑さ」「コスト」「人材」の壁をどう乗り切ればいいのか?

  2. クラウドコンピューティング

    【IDC調査】2026年には75%のアプリがAIを実装!導入で遅れた企業はどう“逆転”すべきか?

  3. 運用管理

    経産省調査で明らかに:未だにレガシーシステムを抱える企業が8割!オープン化でよくある課題とは?

  4. 運用管理

    AWS東京リージョンの大規模障害に学ぶ、パブリッククラウド上のシステムの迅速な復旧方法

  5. windows-server

    【ユースケース】ソフトウェア開発にDell EMCインフラ+コンテナを使うメリット

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNet Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]