自動車業界を取り巻く変化は目覚ましい。燃料ではガソリンやディーゼルからの脱却が進みつつあり、コネクテッドカー、そして自動運転に向けて各社はこれまでとは違う技術に取り組んでいる。
「ソフトウェアをコンピテンシーにしたい」というのは、創業から85年目を迎えたJaguar Land Roverの最高情報責任者(CIO)、Simon Bolton氏だ。Bolton氏が5月初めの「Dell EMC World 2017」で、システムのモダン化などの取り組みについて語った。
Bolton氏はまず、「自動車企業のCIOは、いま最も面白い仕事だと思う」と述べる。
業界は大きな変革期にある。電気ベースへの移動が世界レベルで進んでおり、自動化については「2025年にはかなり高度な自動化が実現している」と予想する。イギリスを代表するJaguar(Tata Motors傘下)も例外ではなく、Bolton氏は技術トップとして様々な変革を主導している。同社は2016年末、EVコンセプトカー「I-Pace」を発表したばかりだ。業界の変化に対応し、リードするためには、ソフトウェア、データの知識を中核に据える必要があった。「これまでJaguarは物理的な製品を作るメカニカルカンパニーだった。だが製品はデジタルになっており、既に2000万行のコードが車に入っている」とBolton氏はいう。ソフトウェアの開発、リリース管理、データの活用などの専門知識を自社の核とするための作業に着手している。
だが、歴史がある分、システムも課題があった。「(2016年に)Jaguarに入社した当時、データセンターを見ると20年、25年前の技術がたくさん使われていた。技術的には3〜4世代前の技術だ」とBolton氏、「必要とされているペースで動くには、技術をモダン化する必要があった。目的に合うものにして、よりアジャイルにオペレーションできるようにしなければならなかった。20年以上前のレガシーアプリケーションでは、迅速に動くことができない」と振り返る。最終的には顧客の期待に応えられないことになる。
Bolton氏のもと、SaaS、IaaSなどでのクラウド活用を含むモダン化を進めてきた。注目を集めたのはI-PACEのローンチだ。バーチャルリアリティを用いたイベントを英国と米国で開催した。Dellの「Dell Precision Workstation」とHTCのバーチャルリアリティヘッドセット「VIVE」を用いたもので、ゲストはVIVEを装着して車をバーチャルに体験した。