アディダスと提携した話題の3Dプリンタ企業--2019年には数百万足へ - (page 2)

末岡洋子

2017-06-20 06:20

 それまでは、財務はNetSuite、人事はWorkDay、製造はpc/MRP、とバラバラのシステムを使っていた。Googleのスプレッドシートもあり、システム化されていなかったとHutton氏は振り返る。

 Oracleのクラウドは、1つのデータモデル、事前統合などの特徴を持つが、Hutton氏もその特徴を魅力に感じたようだ。「HR(人事)、サプライチェーン、ファイナンス、フィールドサービスを接続し、継続的にアナリティクスやインテリジェンスを利用できるシステムがよかった」とHutton氏。それらを個別で揃えて接続するか、統合されたものを導入するかーーHutton氏が選んだのは統合型だ。

 「Oracleは事前に接続、統合済み。TCOを考慮すると差分的な統合コストが発生しないし、アップグレードがあれば事前に統合された形で届く」とHutton氏はメリットを話す。「将来にわたって使えるシステムをと考えるとOracle Cloudが最適な選択だと判断した」と続けた。

 Oracle Cloudの導入を決定したのは2016年6月、翌月にフェーズ1としてFinancials Cloud(ERP)、HCM Cloud、Service Cloudの実装をスタートした。そして4カ月後の11月にはシステムはライブになった。「予算も時間も全て予定通り」とHutton氏は満足顔だ。フェーズ2ではFinancials Cloudの国際対応、SCM Cloudの導入を行った。

 なお、システムを検討するにあたってオンプレミスという選択肢はなかったという。「われわれのプリンタもクラウド上で動いており、Carbonはクラウドネイティブ企業だ。オンプレミスへの投資は意味をなさなかった」とHutton氏。Oracleと合わせて検討したというSAPについては、「Oracleより(クラウド製品が)機能面で遅れている」と評価した。中でも、Carbonが重視していたサプライチェーンの機能で、Oracleの方がニーズを満たしていたという。

 Oracleの手厚いサポートにも言及し、「200人の小さな会社であるわれわれも、GEのような大企業でも同じように扱ってくれる。システムが本番稼働にはいった時、製品担当者、サクセスマネージャー、プロダクト開発者とそれぞれの立場で順調に進んでいるか配慮してくれた」としている。

 セキュリティ、信頼性についても、オンプレミスで自社で管理するよりも安全であり、高い可用性を実現する、とHutton氏は見る。なお、CarbonではIT専属は3人。「ITのメンテナンスに割くリソースはない」と笑う。顧客のデータには機密性が高いものもあるが、「顧客はわれわれのシステムがオンプレミスなのかクラウドなのかは気にしていない。彼らはCarbonのプリンタの機能を重視して我々を選んでいる」と述べた。

 Carbonは次の段階として、PLM(製品ライフサイクル管理)を評価中だ。「OracleのPLMはネイティブにSCMと統合されているのが魅力」とHutton氏。事業の拡大に合わせて既存のシステムそのものも拡張していく予定で、「急速な拡大にクラウドはベストフィットする」としている。

 最後にCarbonそのものの事業について展望してもらった。「われわれは3D製造という新しいカテゴリを作っている。Adidasとの提携は、(それまで産業寄りだった)3Dプリンティングがコンシューマー向けでも使われることになる。2017年中に5000足、2018年位は10万足、2019年には数百万足と拡大していく。そのころには3Dプリンタ技術で作った靴は珍しいものではなくなるだろう」(Hutton氏)。日本市場についてはニコン、化学メーカーJSRから出資を受けたところであり、「参入は時間の問題」とした。

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