富士通は5月30日、デジタル生産準備ツールの新版を6月1日から販売開始すると発表した。同製品の販売目標は、2020年度末までに売上50億円。
デジタルプロセス社が開発した、製品の組立工程検討を3次元モデルで支援するデジタル生産準備パッケージソフトウェア「FUJITSU Manufacturing Industry Solution VPS」(VPS)の機能を強化したもの。CADで作成した製品の3次元モデルデータを活用し、製品組立時の工程検討、製造ラインのレイアウト検討、製造用ドキュメント作成、生産設備の制御ソフトウェア検証といった生産準備に必要な業務をカバーし、量産立ち上げをスムーズに実施できるようにする。
今回、組立製造業向けに、組立工程を検討するだけでなく、設計変更や現場カイゼンにより常に変化する組立工程情報を、タイムリーに更新し、生産現場の工程と一体化できるようにした。
IoT化が進む生産現場では、組立手順などの工程情報が、生産現場とデジタルデータの間でタイムリーに連動することが不可欠となる。しかし、計画段階で作成した各工程の部品や作業手順、作業場所を示すBOP(Bill of process)情報と、現場で更新した最新の現場工程情報とを一致させるには、作業負荷が膨大になることが多かった。
組立工程情報の最新化では、作業指示書など生産で使われる技術文書に利用する動画や静止画を作成するために、分かりやすい視点に自動的に切り換える機能や、工程情報を注記として一括自動挿入する機能を追加した。さらに設計変更対応機能に差分形状表示や色分け機能を追加し、組立工程情報を正確かつ短時間に作成し、最新化できる。
組み付け対象部品の自動拡大表示
工程情報の図中への一括自動挿入
また、多種多様な製品仕様に対し、全ての仕様に含まれる部品および工程情報を、形状情報とともに1つのVPSファイルに集約し、製品仕様ごとに工程情報の表示や出力、組立動画の再生など、切り替える機能を追加した。これまでVPSファイルを作成・運用は仕様ごとに行っていたが、新版では、共通する部品や工程に変更が生じても、仕様別の全てのVPSファイルを修正する必要はない。
さらに、BOM-CAD割当機能を追加した。これは、製品構成や組立手順が大筋確立している大型車両などの製品に対し、部品一覧や構成などを示したBOM(Bill of materials)情報を元に組立工程情報を作り込むことができる機能。BOMシステムで管理される部品・構成情報とCADの形状情報を組み合わせ、組立工程情報を作成することができ、部分的にユニットなどの改善が行われた場合などでも、速やかな組立工程情報の作りこみが可能となる。
生産現場のIoT化への対応では、生産現場の作業実績情報をVPSにフィードバックできるようにした。VPSで作成した組立手順の動画や工程フロー情報などの組立工程情報を生産現場で閲覧するための製造指示Viewerを提供することで、従来の紙での作業指示書に代わり、わかりやすく作業を指示できる。また、製造指示Viewerは、カスタマイズして、工具やピッキングシステムからセンシングした作業実績情報を製造実行システム(MES:Manufacturing Execution System)に自動連携することが可能となる。
製造指示Viewerのイメージ
これらの機能強化以外にも、製造ラインのレイアウト検討を行う「VPS GP4」では混流生産時のライン検証機能を追加し、また、生産設備の制御ソフトウェア検証を行う「VPS IOC」ではロボットを含む生産設備の制御プログラムの検証機能などを追加している。
VPS製品構成