ユーザー体験と内製化の関係

ユーザーとともに進める内製化のかたち--マネーフォワードの開発体制 - (page 2)

都築貴之

2017-06-13 07:00

パートナー企業版マネーフォワードの開発

 われわれのチームにとって、フォーカスすべき「User」とは誰なのか。マネーフォワードでは、2015年からパートナー企業である企業、金融機関に向けたPFM(個人資産管理)サービス(「パートナー企業版マネーフォワード」)を開発しています。サービスを利用するユーザーはもちろんですが、パートナーとなる企業、金融機関もまたわれわれのチームにとっての「User」だと考えています。サービスを利用するユーザーが色々なお金の課題を抱えているのと同様に、パートナー企業もさまざまな課題を抱えています。

 われわれのチームでは、「誰のための」「どういった課題を」「どのように解決するのか」「本質的な課題は何なのか」について、常に意識しながらサービス開発に取り組んでいます。パートナー企業の課題はさまざまで、本質的な課題を見極めることは簡単ではありませんが、「User Focus」を体現した取り組みの一つとして、マネーフォワードの社員がパートナー企業に常駐し、日々の業務や、パートナー企業のお客様からのヒアリングを通して、パートナー企業と一緒になって課題の抽出、課題の解決について考える取り組みを行っています。

 ただカスタマイズしたサービスを提供するだけであれば、外注した方が安定したプロダクトを提供できるかもしれません。しかし、「User」の本質的な課題を理解し、「誰のための」「どういった課題を」「どのように解決するのか」を自ら考え、サービスとして実現するためには、現時点においては内製化という選択肢以外ないと考えています。

 今回は、このパートナー企業向けマネーフォワードを開発する際に、具体的に社内で取り組んでいることに関してお伝えできればと思います。


金融機関などパートナー企業向けにカスタイマイズしたサービス

パートナー企業にメンバーが常駐

 「パートナー企業版マネーフォワード」の開発にあたり、われわれはパートナーである金融機関様の課題や懸念事項を把握するため、実際に金融機関様のオフィスや銀行の支店に当社従業員メンバーが一定期間常駐しています。

 支店にご来店している顧客に声がけして実際にアプリを触ってもらい、「利用するには何がハードルなのか」、「利用にあたっての懸念事項は何か」といった項目を聞き、その内容をエンジニアに報告し、サービス開発に生かしています。

 「パートナー企業版マネーフォワード」を主に利用するユーザーは、パートナーである金融機関や企業を利用する顧客ですが、その年齢層は、ご年配から若い人までさまざまです。

 サービスを開発するには、エンドユーザーである支店に足を運ばれる顧客と接点を持ち、生の声をサービス開発に生かしていくことが重要だと考えています。具体的には、「現状のアプリは、金融機関を登録するまでにステップ数が長い」などの課題を指摘されていたため、実際にそういった現場からのご意見を元にしたサービス改善への取り組みがスタートしています。

 パートナー企業によっても「高齢のユーザーにもスマホでアプリを使えるようになってほしい」「若いユーザーにもっとサービスを使っていほしい」など、それぞれ異なる課題を抱えており、それぞれの課題に合ったサービスを提供していく必要があります。このような取り組みは、パートナー企業とわれわれの考えが合致し、お互いの意気込みの元にスタートしてもので、「より良いサービスをユーザーに提供したい」「課題を解決するためにサービスを改善したい」という目的の元、それを達成するためのひとつの選択肢としています。

 このような常駐先で課題に関するエンジニアへのフィードバックは、常駐したメンバーからの口頭での報告とレポートにて共有しています。エンジニアとビジネスメンバーに向けた報告会を開き、単純に資料を読み上げるだけではなく、ユーザーの温度感などを可能な限り生温度感で伝えるようにしています。

 これら以外にも、「顧客の生の声を聞いた方が、温度感や気持ちが理解できる」というエンジニアからの意見が挙がったことから、エンジニアがパートナー企業との打合せに出席したり、パートナー企業向けのセミナーにエンジニア自ら足を運んだりもしており、実際にパートナー企業やユーザーの生の声を聞くということに注力しています。

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