量子コンピュータの開発スピードがここにきて急速に高まっている。そこで今回は量子アニーリングにこだわらず、新時代を築く量子コンピュータの開発状況を眺めてみよう。
量子コンピュータを代表する2つの方式の一つがD-wave Systems社が販売している世界初の商用量子コンピュータが採用している方式、量子アニーリングだ。現行では2000量子ビットを搭載するD-wave 2000Qというマシンが販売されている。
ただしこの量子アニーリングは最適化問題に特化して開発されて、変わった利用方法として機械学習への応用がある。極めて限定的ではあるものの、最適化問題そのものの応用範囲の広さから、利用する顧客やユーザーが世界中で増加している。
前回紹介したようにリクルートコミュニケーションズもD-wave Systemsの量子アニーリングマシンを駆使して、その目を見張る性能の虜になった。
そしてもう一つの方式がゲート方式による”万能”量子コンピュータと呼ばれるものであり、量子アニーリングのように最適化問題に特化するといった限定が外れ、量子力学で許されたどのような計算もできる文字通り最強のマシンだ。
その万能性から量子アニーリングをソフトウェアとして動かすこともでき、実際そのような最適化量子アルゴリズムが実装されている。

2000量子ビットを搭載するD-wave 2000Q
この5月17日に、IBMが17量子ビットの量子コンピュータを披露した。小さな数字に聞こえるかもしれない。しかし非常に重要な一歩を人類が歩んだことを示す数字である。
われわれが利用しているコンピュータは、プログラムにより指令を送ることで所望の動作をする。いわば自由自在にお願いを聞いてくれる大規模な装置である。
そのコンピュータの動作原理は、(物理学の観点では)電気が流れるか流れないか、という2つの状態をそれぞれ異なるものとして扱う。
この2つの状態の間のスイッチングを巧みに利用して複雑な動作を実現させている。