五十嵐氏はこれまで、日本マイクロソフトやApple Japanで法人向け事業に携わり、さまざまな要職を務めてきた経歴を持つ。とくにマイクロソフトがクラウドサービス「Windows Azure(現Microsoft Azure)」を展開し始めた頃は、筆者も同氏に幾度となく話を聞き、丁寧に答えてもらった覚えがある。そんな同氏がDropboxをどうさらに成長させていくか。経営手腕に注目しておきたい。
「AIはAmazing Innovation(驚くべきイノベーション)である」
(米Gartner Alexander Linden リサーチバイスプレジデント)
米GartnerのAlexander Lindenリサーチバイスプレジデント
ガートナージャパンが先頃、自社フォーラム「ガートナー データ&アナリティクス サミット 2017」を開催した。米Gartnerのリサーチバイスプレジデントを務めるAlexander Linden(アレクサンダー・リンデン)氏の冒頭の発言は、「AIは人工知能(Artificial Intelligence)というより、驚くべきイノベーション(Amazing Innovation)の略だと思っている」との持論を語ったものである。
Linden氏の講演内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは冒頭の発言に注目したい。同氏はなぜAIを「Artificial Intelligence」ではなく「Amazing Innovation」と表現するのか。この表現に至る過程で、同氏はこんな説明を行っていた。
AIの進歩(出所:ガートナージャパンの資料)
まず図に示したように、AIはこのわずか5年で大きく進歩してきたという。一方で、同氏は「コンピュータは人間のように思考できるわけではない」とも。さらに「AIが私たちのかなりの割合の仕事を奪うとよく言われているが、そうではなく、AIは多くのタスクを肩代わりしてくれるものの、私たちの代わりになれるわけではない」と強調した。
そのうえで、「私たちはまだ人間の脳の基本的なメカニズムしか分かっていない。その全てを理解することは非常に困難だ」と指摘。つまり、AIを人工知能と表現するのは「おこがましい」というのが、Linden氏の考え方だと受け取れる。
では、なぜAmazing Innovationなのか。同氏はこんな説明をしてみせた。
「汎用的なAIはまだまだファンタジーの世界の話だ。だが、ここにきて特定の領域に向けてAIを活用したソリューションが相次いで開発されるようになってきた。いわば“狭いAI”だが、その進化には目を見張るものがある。これらはまさしく“驚くべきイノベーション”を起こしていくものになるだろう」
特定領域に向けたAI活用の進化――同氏がAIをAmazing Innovationと表現するゆえんはこの点にあるようだ。こういうユニークな見解は、ぜひもっと論議の材料にしたいところである。