コンポーザブルインフラ「HPE Synergy」
HPE Synergyは、ソフトウェア定義インテリジェンスを利用してコンピュート、ストレージ、ネットワークで流動性のあるリソースプールを作成しユニファイドAPIを提供する「業界初のコンポーザブルインフラ」だ。
HPE SimpliVityがシンプルな仮想化体験を提供するのに対し、Synergyはインフラ・アズ・コードとして仮想マシンに限らず、さまざまな種類のアプリケーション向けとなる。10万レベルのノードに対応するデータセンタースケールを特徴とし、「クラウドのスピードでプロビジョニングでき、ITオペレーションを簡素化できる」とLewis氏。
HPE Discoverで発表された最新世代”Gen10”コンピュートモジュールを採用することで、Gen10のセキュリティ、データ中心のワークロードの性能を改善できるという。ソフトウェア定義ストレージ「HPE StoreVirtual VSA Software」も統合し、ストレージで柔軟性を強化する。
DAS(Direct Attached Storage)のキャパシティは25%強化されるとのこと。GPU拡張モジュールにより、CADワークロードやVDIなどの性能を強化し、100GBネットワークリンクにより25/50GBの接続性を実現する。
HPE Discoverでは、HPE Synergyのいくつかの強化も発表している。まずはプロビジョニングのスピードを強化、VMware ESXとDockerのテンプレートとイメージを追加した、「3クリック、5分で実装できる」とLewis氏は言う。
ITオペレーションの簡素化も進めた。Cisco ACIネットワーク設定のためのスクリプティングが加わり、スケールアウトコモディティサーバの管理のための業界標準(DMTF)のRedfishを統合した。テンプレート主導のファームウェア管理によりアップデートが容易になる。また、DevOps用途向けにエコシステムを拡大し、MesosphereなどとOneView APIとを密に結合した。
これらの強化点を紹介した後、Lewis氏が強調したのがパフォーマンスだ。VMmark 2Xベンチマークでナンバーワン、SPECjbb2015など7種類のベンチマークスコアで一位であると紹介したことに加え、パブリッククラウド(AWS)と比較しての1時間あたりのVMの価格についても「約半分」という。なお、これらはGen9ベースでの測定となり、Gen10になるとさらに高速に、コスト効率が上がるとみる。
時間あたりの仮想マシンの価格はAWSの半分という。
既に400社が採用するHPE Synergy
HPE Synergyは2016年末にボリューム出荷を開始、6カ月足らずで既に400社が採用を決定している。
その中には、ワシントン州運輸省のように先進的なコンポーザブル機能よりもブレードのリプレースでSynegyを利用したところもあれば、コスト削減と収益性改善を狙ったSAPホスティングのSymmetry、クリエイターのアイディアをすぐに実現する環境を整えたDreamWorks Animationsなどがある。
ステージに上がったワシントン州運輸省の最高技術責任者(CTO)、Wayne Holland氏(左から2番目)、SymmetryのCTO、Christian Teeft氏(左から3番目)、DreamWorks Animationsの技術コミュニケーション担当シニア・バイス・プレジデントKate Swanborg氏(右)。左はHPEのRic Lewis氏。
SAPホスティング企業として年成長率40%で成長しているというSymmetryのCTO、Christian Teeft氏は、米国内、そして欧州へと拡大計画があり、コストを削減しながら収益性をアップする必要があった。Synergyの採用により、大型のサーバやケーブルが不要になり10〜15%のコスト減が図れたほか、ラックあたりの収益性が大きく改善した。
だがTeeft氏が一番のメリットとするのが、顧客へのメリットだ。OneViewを用いたDevOpsを実践しており、これまで60時間かかっていたようなプロビジョニング作業が36分程度で完了するように。「プラットフォームの敏捷性、性能を改善できた」という。
「コンピュータグラフィック(CG)アニメーション制作は高性能コンピュティング」というのはDreamWorksのSwanborg氏だ。1本の映画の制作に約4年を要するが、リソースも費やす。「1億3000万フレームはそれぞれ、数千、数万のデジタルアセットを持つ。映画を1本制作すると50万ものデジタルファイルができる」とのことだ。複数の映画の制作が並行して進んでいることから、多い場合50億件ものアクティブなデジタルファイルを同時に管理していることもあるという。
そこでSynergyを採用したハイブリッドクラウド環境を導入した。メリットは「面倒な作業が不要」である点だ。「ハイブリッドIT環境を容易に実現・運用できるようになった。クリエイターの提案に対してすぐに”イエス”と言える環境を手に入れることができた」(Swanborg氏)。