海外コメンタリー

「OS/2」を2017年によみがえらせた「ArcaOS 5.0 Blue Lion」

James Sanders (Special to TechRepublic) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2017-06-15 06:30

 IBMが「OS/2」の積極的な開発を中止すると発表してから20年が経過したが、このニッチなOSは、依然としてIBMのエンタープライズ顧客からニーズがあり、不思議なほど長く存続している。OS/2の開発は、IBMのサポートが2006年12月に終了したあとも、ライセンスを受けたサードパーティーによって続けられてきた。

 OS/2向けの新しいハードウェア用のドライバや、その他のユーティリティを提供し続けてきたArca Noaeは、2015年11月に、OS/2の新しいディストリビューションをリリースする予定だと発表した。その製品「ArcaOS 5.0」(Blue Lion)は、「eComStation 2.2」のリリースが先行き不透明になったことで生まれた間隙を埋めるように、2017年5月15日に一般提供が開始された。

 OS/2の歴史と、IBMがこのプラットフォーム(および計画されていた後継OS)を継続しなかった経緯に触れずに、ArcaOSについて語ることは難しい。ArcaOSの目標は、単に古いOSにパッチを当てて、新しいハードウェアでも使えるようにすることだけではない。ArcaOSはIBMがアップデートのリリースを終了して残された、OS/2の使い勝手を悪くしていた不備を補うように設計されている。

過去最高のOS/2インストーラ

 ArcaOSでもっとも大きく変わった点は、まったく新たに開発されたインストーラだ。OS/2に付属していた、IBMブランドの以前のインストーラは、開発が続いていた時期でさえ、ユーザーにとって大きな不満の種とされていた。しかし、いくつか癖もあり、新しいプライマリパーティションの作成には再起動が必要となる。Arca Noaeによれば、これはインストールの際に、BIOSが新しいパーティションテーブルを読み込む必要があるからだという。この問題は、今後GPTのサポートが追加されればなくなるかもしれないが、具体的なことはまだ分からない。

付属ソフトウェア、アップデートの管理

 さまざまな開発会社が(その多くは独立開発会社だが、OS/2のコミュニティの緊密さを考えると、Arca Noaeと何らかのつながりを持っている)、さまざまなオープンソースソフトウェアをOS/2で使用するための移植版を開発している。中でもドイツ企業のbww bitwise worksは「Apache OpenOffice」の移植版を提供している。同社の名誉のために記しておくが、これはOpenOfficeの最新版だ。ただし、2010年にOracleとOpenOfficeの間で紛争が起きて「LibreOffice」が誕生してから、OpenOfficeの開発はほとんど停滞してしまっている。2016年9月には、OpenOfficeの開発中止を提案する声が注目を集めた。2017年第1四半期に予定されていたセキュリティパッチも、本記事公表時点ではまだリリースされていない。

 また、ArcaOSは「Firefox」の延長サポート版であるESR 38.8を使用しているが、Mozillaはすでにこのバージョンのサポートを終了している。ESR 45へのアップデートが計画されているが、これもすでにサポートライフサイクルが終わりかけており、現在はESR 52がリリースされている。ただし、やや古いとはいえ、このブラウザはYouTubeの再生と行った通常の活動に使う分には支障はない。

ArcaOS
提供:ArcaOS

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