人がテクノロジに物理接触する際、UI(ユーザインタフェース)を避けて通ることはできない。スマホやPCの操作は言うに及ばず、ゲーム機のコントローラからクルマの運転、銀行のATMからTSUTAYAの店内検索機まで、UIは現代人の生活のすみずみにまで入り込んでいるからだ。
SFなどのフィクション作品に登場する架空のテクノロジが「ああ、本物っぽい」と感じる時は、決まってそのUIがきちんとデザインされている。
15年前の近未来SF映画『マイノリティ・リポート』(02)では、いわゆるジェスチャー入力が登場する。マーカー付き手袋を装着したトム・クルーズが、透明アクリル板のようなディスプレイに表示されたオブジェクト(写真や動画のサムネイルなど)をジェスチャーによって「動かして」いるのだ(このシーンは“Minority Report”“UI”で動画検索するといくつもヒットする)。
7年前のアメコミ映画『アイアンマン2』(10)ではさらに進化して、空中に投影されたホログラム(3D設計図など)を、アイアンマン役のロバート・ダウニー・Jrがジェスチャーで動かしている。こちらは手に何も装着していない。
4年前の映画『her/世界でひとつの彼女』は純粋なSFではないが、PCのUIが音声入力ベースになっている近未来が舞台だ。手紙の代筆屋である主人公は、文面作成や印刷といった操作をすべて音声入力で行っている。物語は、女性の疑似人格が搭載された人工知能型OS“サマンサ”に主人公が恋をしてしまう……といったもの。このOSとのやり取りもすべて音声の会話で行われる。
『マイノリティ・リポート』程度のジェスチャー入力なら、現在の技術でほとんど実現可能だ。科学アドバイザーとして同作中のUIをデザインしたジョン・アンダーコフラーが創設したOblong Industries社は映画公開後、実際にジェスチャー入力システムの開発に尽力した。
ゲーム好きなら、Microsoftのゲーム機「Xbox 360」の対応機器として開発されたジェスチャー・音声認識デバイス「Kinect(キネクト)」(2010年発売)を思い浮かべるだろう。こちらはマーカー付きの手袋などが必要ないので、ある意味で『マイノリティ・リポート』より進んでいると言えるのかもしれない。