xTechで起業する上での共通の課題とは?
現在開催されているイベント「xTechイノベーション」は、Startup Hub Tokyoに会員登録すれば誰でも無料で参加できる。
「xTechという言葉は、FinTechを始めよく耳にするようになりました。また、IT系の事業に限らず、情報通信系の技術はさまざまなビジネスで不可欠となっています。そうした意味で、今回のイベントでStartup Hub Tokyoの認知度向上や来館者のすそのを広げる効果があると考えました」(小野氏)
同イベントの全体モデレーターで、デジタルハリウッド大学院教授 佐藤昌宏氏は、今回のイベントでの狙いについて語ってくれた。
「もちろん、多くの人に各xTechの基礎知識や現状に関する情報を提供したいという目的があります。ただ、それに加えてわたしと小野さんは、このイベントを通じて、ある仮説の検証をしたいという計画もあるのです」

「xTechはイノベーティブなものであってほしい」と語る佐藤昌宏氏
それは、「xTechで起業する上で、共通の課題があるのではないか」ということだという。
「各xTechでは、個別の課題もあるでしょう。しかし、もっと全般にわたった共通の課題があり、それを具体的な形で導きだせば、解決方法を発見し、より簡単にxTech起業ができるようになるのではないかと考えているわけです。今回のイベントを通じて、横断的に各分野の課題を見ていき、参加者の声や専門家の意見を集約して共通項として何があるのかを知りたい」(佐藤氏)
共通の課題としてどんなものが想定されるか聞くと、佐藤氏は「業界の壁」「従来の成功体験」を挙げた。
「xTech起業は、ハードウェアというよりも高度な機能を持ったソフトウェアを活用することが多い。そうしたコモディティ化した技術を組み合わせることで、低コストで素早く起業できる。そうなると異分野の企業や小さな資本しか持たない個人、グループが、既存のビジネスに参入しやすくなる。xTechがバズワードからムーブメントに変化していくきっかけは、こうしたプロセスが具体化していくことにかかっているのではないかと思うわけです」
極めて高い技術を持った一部の企業や人が、大きなコストをかけて構築するのではなく、各モジュールを組み合わせるだけで、低コストで新しいビジネスを生み出すことができる時代というわけだ。
「ただし、この考えには反対意見もあります。つまり、業界ごとの慣習があり、いくら異分野や業界の外にいる人が、テクノロジをぶつけていっても、これまでの成功体験で培われたさまざまな業務慣行に阻まれるというわけです。だから、xTech起業は、やはり業界の『お作法』に精通した人が、従来のビジネスの延長線上にあるツールを作り出すことが主流になるだろうということですね」
佐藤氏は、こうした反対意見を全否定するつもりはないという。
「Startup Hub Tokyoには、社内起業を目指している人も参加しています。たとえばそういう人が、自分が属する業界の業務改善に役立つ、つまり従来の延長線上にある何かをxTechで作り上げることは起こりうるだろうし、それが市場に受け入れられれば、素晴らしいことです。今回検証したい共通の課題が、やはり『業界の壁』で、現実には壁を突破することは難しいという結論が出るかもしれません」
その上で佐藤氏は次のような指摘もしてくれた。
「しかし、一方で業界全体が行き詰り状態となっていて、ブレークスルーを求めていたらどうでしょう。これまでの成功体験に基づいた慣行を維持していては、将来はないと多くの関係者が考えていたとしたら、これまでになかった発想を受け入れようとするはずです。わたしは、そういうケースでこそxTechが生きてくるのではないか、サービスを提供する側、享受する側の両方が変化を感じ取るのではないかと考えます。イノベーションとは本来そういうものであり、xTechはイノベーティブなものであってほしい」