Rethink Internet:インターネット再考

「公開」よりも「秘匿」のテクノロジが創造的に--次世代インターネットとブロックチェーン - (page 2)

高橋幸治

2017-06-24 07:00

情報技術は常に「公開」と「秘匿」の2つの方向で進化してきた

 さて、今回のテーマは、冒頭、筆者があえて“基本的に”という保留をつけた事柄に関する話題である。「情報」は“基本的に”より遠方まで到達し、より高速に伝達され、より長期に保存されることがよいと考えられている。

 実際、筆者も含めた現代のITを基盤とする創造産業に携わる多くの人々は、自分たちの開発したサービスが海を越えて多くのユーザーに使用され、しかも一朝一夕に飽きられることなく、末長く利用されることを期待している。

 それはそれでごくごく普通の心情だし、本連載のテーマであるインターネットという「メディア」の特性は旧来とは比較にならないほどの時空の超越にあるわけだから、否定する気などさらさらない。

 一方、「情報」は「より多くの人たちに同一のメッセージをくまなく届ける」という側面と、「限られた人たちだけに隠密裏にメッセージを届ける」という2つの側面があるということを忘れてはならない。

 つまり人間との情報との連綿たる歴史は、情報を「拡散させること」と「拡散させないこと」の両面において発展を遂げたということを今一度再確認する必要がある。

 先に“原始的な「通信メディア」”として挙げた「トーキングドラム」や「狼煙」も他部族との戦闘時などにおいては「暗号」としての要素が必須の条件となり、特定のアルゴリズムによって構成された情報を読み解くための「鍵」は同部族以外に漏えいしてはならない。

 「暗号」といえば2014年に公開されたベネディクト・カンバーバッチ主演の映画「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」(日本公開は2015年)は、第二次世界大戦中にドイツ軍が用いた暗号「エニグマ」を、イギリスの天才数学者であるアラン・チューリングが解読するという史実に基づいた物語がある。

 「エニグマ」は情報をエンコードするためのアルゴリズムが毎日変更されてしまうため、漏えいした情報をたとえ解析できたとしても同一の「鍵」はもう翌日には適用できない。しかし、チューリングはその複雑極まる「エニグマ」暗号のシステムを看破してしまった……。


イギリスの天才数学者であるアラン・チューリングをベネディクト・カンバーバッチが演じた「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」。「チューリングマシン」をはじめコンピューター科学の分野における輝かしい業績の裏で、同性愛者であることを告発され、ホルモン投与治療という屈辱に耐え切れず服毒自殺を遂げたことはあまりにも有名

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