--確かにFINOLABは参画企業や携わっている人を見ると、立ち上げ時点から豪華だったと感じます。
施設もですが、人が集まっているところに、どういう仕掛けをするのかが重要だと思います。実は、われわれがとても成功していると考えるオープンイノベーションの事例は、このFINOLABの運営です。三菱地所と電通グループというビジネスの形態が違う企業同士、良い補完関係にあります。
われわれはSIer(システムインテグレーター)なので(回収することを考えると)、初期投資でこのような施設は持てません。最初は噛み合わないこともありましたが、ディスカッションを続けてきたことが良かったのだと思います。
三菱地所と、「儲からなくても社会貢献になれば良い」ではなく、「今は儲からないとしても、中長期的に大きな成果を出そう」という認識を共有できていたことも大きいです。ビジョンとしての社会貢献は重要ですが、継続的に取り組むためには、ビジネスであることが必要だからです。
--FINOLABで開催しているイベントで成功しているものはありますか。
毎週木曜日に開催しているメンバーズミートアップです。会員の方だけで安心して新しいビジネスの話をできるようにしており、企業会員とスタートアップメンバーのビジネスマッチングの機会になっています。
また、あるスタートアップのCEO(最高経営責任者)は、「メンバーと経営者では悩みが違うので、他のCEOと話せるのがありがたい」とコメントしていました。逆に、メンバーも他のスタートアップの人と話ができ、息抜きの場所になっています。企業会員の方は、社内起業家どうしで、他の部署の巻き込み方や、稟議の通し方などを共有しています。
--大企業とスタートアップの連携が発表されても、成功したというニュースを聞くことは少ないのが現状です。オープンイノベーションで成功するコツはありますか。
ポイントは、スタートアップの働き方やモチベーション、ビジネスの仕方が、既存の日本企業とは違うことを認識することです。スタートアップのCEOは海外や外資系企業で働いた経験のある人が多く、物の考え方も見ている市場もグローバルです。
それに対して、大企業で新規事業の担当をしている人には、入社以来同じ会社にいたり、日本の市場だけを見ている人もおり、情報はタダではないことや、相手の時間を使う意味を理解していないことがあります。
これまで、大企業による新規事業の多くは既存のビジネスの延長でした。しかし、FinTechでのスタートアップとの協業は延長線上にない事業をするためのものなので、今までの新規事業担当の仕事とは異なると認識する必要があります。
FINOLABが定期的に開催しているイベント