Capgeminiは、金融業界の将来を展望するレポートを発表した。このレポートでは銀行に対して、「市場破壊の脅威」に対応するためには、銀行が持つ強みと、FinTech分野のスタートアップが持つ強み(ほかの主体に対してAPIを公開するなどの手法)を組み合わせるべきだと提言している。
FinTech分野のスタートアップは存在感を増しており、Capgeminiの「World Retail Banking Report 2017」では、非従来型の金融サービス事業者が、顧客の支持を集めている現状が明らかになっている。今では銀行顧客の3分の1近くが、少なくとも1つの非従来型事業者のバンキングサービスを利用しているという。
ただしCapgeminiは、新規事業者はまだ大きな市場シェアを占めるには至っておらず、従来型の金融機関にも対応する手立ては残されているとし、従来型の銀行がテクノロジ主導の金融企業から受けている脅威は、「厳しい状況とは言えない」と強調している。
「ほとんどの銀行は、社内ではレガシーシステム間の情報の流れを改善するためにAPIを利用しているが、ビジネスパートナーが提供する機能を取り込むためのAPI利用は、多くの場合まだ初期段階にある」とレポートでは説明している。
「しかし、APIを使って社外のサードパーティーにシステムやデータを幅広く提供するとともに、双方の組織に新たな収益源を生み出すことで、イノベーションと機能を戦略的に提供できる可能性がある」(同レポート)
銀行はAPIを活用することで、技術的な互換性の問題を回避しながらイノベーションを起こし、同時に、これまでよりも素早く新たなサービスを実現できるようになる。
今後の銀行の成功は、よりオープンなバンキングモデルへの移行にかかっており、これによってサードパーティーの「創造性が解放」され、これまでになかったチャンスが生まれるとCapgeminiは述べている。
さらにレポートでは、「しかしそこに到達するには、慎重な計画と、銀行が納得してビジネスモデルを進化させる戦略的な決断をする必要がある」と付け加えている。「テクノロジ企業はその強みを生かして顧客を満足させており、銀行が従来通りの存在感を維持するためには、今すぐ行動を開始する必要がある」
FinTechは顧客体験の面で成功しているが、FinTechプラットフォームがユーザーとの緊密な相互作用を実現できている理由には、ニッチなサービスを提供していることや、FinTech企業が最初からデジタル企業として生まれていることなどが挙げられる。
従来の金融企業と、非従来型の金融企業の肯定的な顧客体験(2017年)
提供:Asha McLean/ZDNet